【徳井健太の菩薩目線】第14回「2019年、俺はユンボで未来を開拓していく。」
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第14回目は、Kindle版としてのみリリースされている、自身の書き下ろし小説「カゴの中の鳥」にまつわるエピソード、そして自身が渇望する己の存在意義について、独自の梵鐘を鳴らす――。
俺が書いた電子書籍「カゴの中の鳥」は、夢も希望もない絶望小説。
そして、2019年、俺はユンボで未来を開拓していく。
昨年11月29日に放送された「アメトーーク!」(激動の同期芸人)で、俺が「カゴの中の鳥」という電子版小説を書いたことが取り上げられたけど、自分で言うのもなんだけど絶望小説。ダウンロードした人は、子どもの手の届かないところに、保存しないとダメだよ。
話の内容は、芸能界を夢見てしまった人間の話。「みんなが憧れる芸能界。キラキラ輝いていて毎日楽しくって、ウキウキ最高……なんて振り撒かれたウソを踏み潰すために書きました」って内容紹介に綴ったように、夢に踊らされちゃいけない。
実は、俺は高校時代はバンドを組んでいて、ラーメン屋かお笑い芸人かバンドマンになるかで迷っていたの。北海道の田舎で育ったから、夢の選択肢なんてそんなもんじゃん。eastern youthってバンドが大好きで、彼らを越えることはできないけど、お笑いだったらてっぺんを狙えるんじゃないかと思って、お笑いを選択した。その後、NSC入学直後に、己の愚かさに気が付いたのは、第10回のコラムで書いた通り。
話の主人公はバンドマン。高校時代の俺の姿を、投影した部分もある。Vo&Gtを担当していた俺は、イタい勘違い野郎の集まりだったけど、そこそこ人気があった……というのも、小さい田舎だから、町で3つくらいしかバンド活動をしている学生がいない。出場高校が3つしかなかったら、どんなクソ高校でも表彰台に上がれるってことと一緒。でも、「キャーキャー言われたら終わりだ」みたいに斜に構えていて、カバーするにも絶対にシングル曲は選ばず、マニアックなアルバム曲を演奏するみたいなことをしていた。盛り上がるわけないのに、盛り上がるの。それが嫌で、嫌で。あのとき、素直に担がれていたら良かったなって、ときどき思い出す。
そんな面倒臭いバンドマンと、チャラついた芸能人、そして、そこに欲を求める夜の世界の女性を軸に、いかに世界が腐っているのかを滔々と書き綴ったのが、「カゴの中の鳥」。カゴの中の鳥になる奴なんて、ごまんといる。気が付いたらカゴの中にいるのか、自らすすんでカゴの中に入るのか……奇特な方は、俺の本を読むことで、夢や希望との距離感を覚えてほしい。