【徳井健太の菩薩目線】第16回「クソマウンティングをしてくる奴は、誰かを応援できない阿呆」

必要のないマウンティングが、誰かの自信を喪失させている


 俺の存在は、どうやら分かっていないようだった。だから、俺と歯のおじさんは、他の受講者からみるとド素人もいいところ。つまりは、“おちこぼれ”という設定になる。座学が終わって、実技に入ると、その色はより鮮明になった。

 歯のおじさんが、ショベルカーの運転を始めると、必ずと言っていいほど現場監督風の男が、「遅ッ」といじりだし、周りから「ガハハハッ」と下品な笑いが生まれる。そして、歯のおじさんが戻ってくると、「お疲れさまでした。いい感じでしたよ」と、卑しい顔で迎える。

 吐き気がしたよね。いい大人が、中学生のようなことをしている。そんな雰囲気を感じ取ったのか、歯のおじさんも必要以上にタイムが遅いことに凹む。俺だって決して早くはない。だから、「重要なことは受かることであって、タイムじゃないですよ。遅くても受かればいい。最初はみんな下手。歯を作ったときもそうじゃなかったですか?」って、おじさんに声をかけた。ところが、一向にテンションは上がらない。どうやら、陰で笑われているであろうことが「恥ずかしい」と、視線を落とす。

 俺は、社会の闇を見た。知らない間に、誰かの自信をそぎ落とすような空間、人間関係が、社会には溢れかえっているんだって。受かることの喜び以上に、ストレスがその人の気持ちを上書きしてしまう。なぜ、第二の人生を視野に入れて資格を取りに行った人が、イジられるのか――俺には理解できない。クソのようなマウンティングをしてくる奴は、所詮、その程度。誰かを応援できないバカだと思って、相手にしない方がいい。

 工事現場では、そういう輩が重機を取り扱っている場合もあるんだ。安易に、重機のそばには近づかない方がいい。人に対する配慮や優しさに欠ける人が運転していたら、猛獣に近づくようなものだ。

 歯のおじさんも俺も、なんとか合格することができ、「ブルドーザー」「モーターグレーダー」「トラクター」「ショベルカー」「パワーショベル」「ずり積み機」などなど、一定数の重機を運転する資格を得た。その後、歯のおじさんがどうなったかは知らない。

 問題は、得た知識や技術が鈍らないように、どう継続性を担保するか。先生に聞くと、PS4の重機を動かして建物を建築するシミュレーションゲーム「Construction Simulator 2」というゲームを紹介された。……。こうなったら、吉村が購入した無人島で、腹いっぱい重機を動かしてやろうと、考えている。



※徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
◆プロフィール……とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
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