代々木公園スタジアム建設構想のその後【渋谷未来デザイン 金山淳吾理事インタビュー(上)】

昨年9月に行われた「都市とスポーツとエンタテインメントの未来」と題したイベントには川淵三郎氏(日本トップリーグ連携機構 代表理事 会長)らが参加。ここでスタジアムパークの建設構想が明かされた(撮影・鬼束麻里)

過去3回のクロストークでは「あまり意外な反対の意見は出ていない」



 過去3回のクロストークでのディスカッションの中で反対とは言わないまでも、もろ手を挙げて賛成というわけではない人もいた。そういう意見は想定内だった?

「代々木公園で静かに過ごしたい、子供なんて来てほしくないと思っているユーザー、陸上のトラックを使っている陸上愛好家、バスケットコートでバスケットを、フットサルコートでフットサルをやっている人、といったそれぞれの目線のいろいろな意見があるだろうなとは思っていました。代々木公園というとA地区、B地区、それから国立代々木競技場の敷地、行政でいうと国立のエリアと都立の公園、都立の公園の中でもパブリックなスペース、イベントを受け入れられるスペース、イベントがダメなスペースというように区画が分かれているんですが、利用者はそういった細かい区別はなかなか分からない。利用者目線で考えると、これまであった機能がなくなると反対が出るだろうこと、それに対してはどこまでだったら許容範囲なんだろうかということは想定していました。例えば、バスケットコートのエリアも含めて開発をしないとスタジアムは立たないと思うんですけど、バスケットコートをどこかに移設することになった時に、隣のA地区だったら道を一本渡るだけなのでそこの導線ができればいいかもしれないけど、バスケットコートは笹塚に用意しました、となると、それは反対の意見が出るだろうなということは想定していたので、あまり意外な反対の意見は出ていないですね。開発案件なので、自然を守りますよといっても、プロセスの中ではそこにトラックががんがん入って、コンクリートで基礎を作ってということはどうしても発生するので、そういうことに関しては環境破壊行為だという声もあるだろうなとは思っていたんですが、それも思っていたよりは少なかったかなとは思います」

 では新たに持ち上がった問題は特になく?

「そのスタジアムがある日常というのは実際どういうことになるのかというところはまだ見えていないと思います。例えば駅のトラフィックはどれくらい混むのか、それが恒常的にどうなっていくのか、イベントをやった時の騒音とか振動はどうなるのかとか。その辺は僕らもまだスタディできていないところがある。それをスタディしたところで公開して、周辺の住民や働いている方がどう思うのかということは聞いていかないといけないとは思います。騒音や振動については、許せる施設とそうでない施設があると思うんです。そういう基準をどう持てるのかとか。そういうことを考えていかないといけないと思うんですよね。面白い話として、よく分からないロックバンドの騒音は嫌だけど、ポール・マッカートニーのライブだったらいいという話があったり、音楽イベントだと70デシベルでの規制がかかるんだけど、花火だと200デシベルくらいでもみんなが喜ぶという話があったりする。どういうコンセプトで、どういうテーマで、どういうルールの中で何を掲げていくのかというのは難しいですよね。日本武道館なんかは周りに住宅はないが、聖地になっていて、本当は誰でも借りられるんだけど、あそこでやれるというのは選ばれた感があるじゃないですか。そういう精神をどう醸成できるか。だから僕たちもコンセプトで“情熱の聖地を”と言っていますが、とにかく単なるお金儲けの興行だけではなくて、ここでやったことが次のステージに上がる一つのプライドになっていくような場所になるといいなと思っていて、それを自分たちの街の真ん中で見られることが市民のプライドになっていければいいなと思っているんです」   (本紙・本吉英人)
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