二ツ目さん数珠つなぎ【第5回】柳家喬の字「落語の普及活動を生涯続ける事が使命だと思っています」


 ところで師匠の柳家さん喬と顔が似ている気がするのですが…。

「すごくよく言われます。何年かに1回は隠し子騒動が起きますので(笑)。またその話ですかって(笑)。もともと僕が落語に興味を持ったのは、高校2年生の時に、学校の芸術鑑賞会で見た桂南喬師匠に衝撃を受けたから。テレビの露出度の高さとは関係ないんだ、こんなにすごい人がいるんだってカミナリに打たれたような衝撃でした。そこから南喬師匠を追っかけているうちに、師匠のさん喬に出会い、この人の弟子になりたいと。そして当時勤めていた福祉系の仕事の整理をつけて、晴れて入門しました。なぜ師匠だったのかと言われると、好きな話や好きな部分が、自分に合っているんじゃないかと思ったから。噺の中で好きな部分はちゃんと押してくれるし、ここはあまり好きじゃないという部分はスッといってくれる。また、人間の情をちゃんと出してくれるところが魅力だと思っています」


 そんな師匠の教えで常に心に留めているものがあるという。
「師匠から学んだ事はたくさんありますが、師匠はよく“芸は人なり”とおっしゃるんですね。これは5代目小さん師匠おっしゃられていた格言なんですけど、芸を磨くより人を磨け、人を磨く前に己を磨け、そうすれば自然と人はついてくると。ずいぶん前ですけど、僕が前座修行で師匠の家に通っている時、いつも部屋から師匠がお稽古をしている声が聞こえてたんです。これだけ注目を集めらている人がこんなに稽古をしているんだから、僕は生涯追いつかないなと思いました。うちの師匠から稽古しろと言われた弟子は誰一人いないと思いますよ。だって師匠がやっているんだから。いわゆる背中を見せて教えてくれているという事ですよね」