日本アカデミー賞『万引き家族』が8冠! 「樹木希林さんが会場にいると思ったら…」
第42回日本アカデミー賞授賞式が1日、都内にて行われ『万引き家族』が作品賞をはじめ監督賞、脚本賞など8部門で最優秀賞に輝いた。
昨年『三度目の殺人』で最優秀作品賞を受賞し、プレゼンターとして登壇していた是枝裕和監督は発表の前に「日本アカデミーに厳しい提言をしろと言われているので、前向きな提言を1つだけ。この映画賞には衣装部門が無んです。衣装は映るものの中でとても大事な部門なので、ぜひ衣装部門、できればヘアメイク部門も一緒に増やしていただければ」と述べ、会場も拍手で同意。その後、自作の受賞を自身で発表した是枝監督。西田から「さっきの話をここで言えばよかったのに」と言われると「スピーチの機会はさっきが最後かと思って(笑)」と笑顔を見せた。
俳優部門では、最優秀主演・助演男優賞を『孤狼の血』が、最優秀主演・助演女優賞を『万引き家族』がそれぞれダブル受賞。『うなぎ』以来21年ぶりに最優秀主演男優賞を受賞した役所広司は「かつて2年連続でこの賞を受賞して以来、頂いていなかったので、つくづく受賞するのが難しい賞なんだと思いました。本作は広島の呉で撮影されたんですが、街の人たちがとても協力してくれて。その呉は大雨で被災し、まだ復興半ばですが、この受賞で少し元気を出していただけるのでは」と喜びを見せた。最優秀助演男優賞を受賞したのは同じく、松坂桃李。トロフィーを握りしめながら「20代の半ばごろから違う色の作品に挑戦したいと思うようになり、白石和彌監督の『凶悪』を見てぜひ白石さんの作品に出たいと思いました。僕にとっては財産のような作品になりました」と感激をあらわにした。
『万引き家族』で最優秀主演女優賞に輝いた安藤サクラはときおり声を詰まらせながら「子育ても映画も24時間、全力でなければならない。どうやって両立すればいいのか分からず、今日、会場に入ったときから自分がそんなあいまいな気持ちでいることが嫌でモヤモヤしていたんですが、授賞式で、私はどうしても映画の世界にあこがれてしまうと分かった」と語り「こうして賞を頂き、自分の中できちんと気持ちに決着をつけて、映画の世界に戻ってきたいと思いました」と宣言。
最優秀助演女優賞は同じく『万引き家族』の故・樹木希林に贈られた。2014年に、ともに司会を務めた西田は「あなたをまねたいのですがまねできません。あなたは唯一無二、本当に素晴らしい先輩でした」と言葉を贈り、トロフィーを受け取った娘・内田也哉子は、樹木が6年前に最優秀主演女優賞を受賞した場で全身ガンを公表したときのことを振り返り「なぜお祝いの場でと問うと、私はいつ死ぬか分からないんだから司会ができず、ご迷惑をおかけするかもしれないじゃないのと言っていた。つくづく母は、なんと真っ当な心を持ったアナーキストなんだろうと思いました」と言葉をつむいだ。
複数の部門で受賞し、そのつど“家族一丸”となってコメントし会場を盛り上げた『万引き家族』チーム。優秀主演男優賞のインタビューではリリー・フランキーが「さっき希林さんが来てるじゃんと思ったら細野晴臣さんだった」と同作で最優秀音楽賞を受賞した細野を引き合いにし、会場を笑わせた。
2018年の日本映画界を賑わせ監督賞や作品賞でも優秀賞を受賞していた『カメラを止めるな!』は最優秀編集賞と話題賞を受賞。最優秀編集賞を受賞した上田慎一郎監督は「仲間でお金を出し合って7年前に買ったMac Proを使って、自宅でほぼ1人、まな板2枚分くらいのスペースで編集作業をしました」と振り返った。さらに話題賞を受賞し「お客さんに選んでいただく賞を受賞できて本当にうれしい。この作品の生みの親はぼくたちかもしれないが育ての親はこの作品を応援してくださった皆さん。全員でこの賞を受け取りたい」と胸を張った。
最優秀外国作品賞:『ボヘミアン・ラプソディ』
最優秀アニメーション賞;『未来のミライ』(監督:細田守)
最優秀主演男優賞:役所広司(『孤狼の血』)
最優秀主演女優賞:安藤サクラ(『万引き家族』)
最優秀助演男優賞:松坂桃李(『孤狼の血』)
最優秀助演女優賞:樹木希林(『万引き家族』)
最優秀音楽賞:細野晴臣 (『万引き家族』)
最優秀脚本賞:是枝裕和(『万引き家族』)
最優秀監督賞:是枝裕和(『万引き家族』)
最優秀作品賞:是枝裕和(『万引き家族』)