青木真也「この試合は僕の物語の一つでしかない」
格闘技の試合自体は別の要素の入り込む余地はないと思うが、試合が決まってからゴングが鳴るまでと試合終了のゴングが鳴ってから2人がリングを降りて観客の前から消えるまで、というのはプロとして試合を盛り上げる、意味のあるものにするための重要な時間になる。
「過去にいろいろ言われたこともありますが、僕は表現の場だと思うから、僕がやったことを最低だとかどうこう言われても…。そう思うんだったら別にもういいやって感じです。でもそういう世界観でやってくれと言われていたので、“それでいて叩くなよな”とは思いますけどね(笑)」
長島“自演乙”雄一郎とのミックスマッチの1Rもかなり叩かれましたが、あれもルール上は何の問題もない。
「青木vs長島は最高の試合ですよね。やっぱあれに勝るものはないっすよ」
1Rと2Rで違うルールのミックスルールにするなら、どんな手段を使っても2Rにいかないとダメですよね。
「いや、ダメでしょう。それに俺から言わせるとミックスルールというのは、もうやったってダメなんですよ。だってあの試合を越えられないもの。青木vs長島以上のものを作れる人はいない。世間に何かを投げかけるものにはならないですよね、絶対」
ミックスルール自体が世間に向けてのアピール性が強いものでもあったし。
「はい。本当にいい試合だと思いますよ。いまだに語られるし。なんか僕に気を使ってあれに触らない人もいるけど。それもちょっと分かんないです。俺は関係ない。むしろ自分の中でベストバウトですらあるので」
会場からもブーイングが出た。
「もうちょっとひどいことを言うと、分かんない人を相手にしちゃダメなんですよね。要はスポーツライクに見ている人は僕のお客さんじゃない。僕のお客さんじゃない人を相手にしてもダメ。だってそういうライト層の人は移り気だし、愛とか教養とかがないから、その時にいいと思った人のところにいく浮動票なわけです。そういう人たちを相手にしていてもいいものは作れない。自分の作りたいものを作るには、割とちゃんとしている自分のお客さんを相手にしたほうがいいですよね」
最近のいろいろな行動はすべてそこに結び付く?
「でも実は格闘技ファンってどうでもいいと思っているんです(笑)」
本の中では「僕には格闘家しかなかった」と書かれている。
「はい。だってみんな普通に9時に会社に行って、5時に帰るということができるじゃないですか。僕はそれができなかった。人とうまくできなかったし、決められたことをできなかったんでこの格闘技をやっているんですよね。だから一般の人より偉いなんて全く思っていない。むしろ“俺たち、できなかったもんな”としか思っていないです(笑)。みんながスポーツ選手に品行方正なものを求めるのは分かるんですけど、そもそも、特に格闘技というのは社会からはじかれた人たちがひっかかる最後のセーフティーネットだと僕は思っています。他の芸事をやる人も全部そうですよね。だからスポーツ選手がなにかしたとか、芸能人が不倫した、とか僕は全く悪いとは思わない」
この日は練習前に取材。ONEでは特別な計量システムを取っていることもあってか、通常からベストな体重をキープしているよう。
「もう1階級下げろという人もいますが、体重を落としてまで格闘技に入り込んでも豊かじゃない。辛いことも多いじゃないですか。だから、下げるのは無駄だと思っています。格闘技でいうと、年を取ってから体重を下げるとダメですね。あと僕はプロレスラーになりたかったので大きくなりたかった。体が小さかったから格闘技に来たタイプなので“でかけりゃでかいほどいいじゃん”って思っているんです」
今回のインタビューを読んで「うるせぇバカ」と思う人もいるかもしれないし、逆にその言葉に納得して見方を変える人もいるかもしれない。そのどちらの意見も飲み込んだまま青木の物語は流れて行く。今回のフォラヤン戦については本人の考えは別にして、メーンである以上、観客の期待は大きい。もちろん純粋に青木のテクニックを楽しむのもいい。しかし試合前の青木の言動をチェックし、会場に足を運び、試合後に2人が去るまでの所作なども見たうえでじっくりかみしめるというもう一つの楽しみ方もある試合。せっかくなのでそういったところもちょっとだけ意識して3月31日を迎えるのも一興だ。
(TOKYO HEADLINE・本吉英人)
ONE Championship「ONE:A NEW ERA −新時代−」
【日時】3月31日(日)開場14時30分/開始15時30分
【会場】両国国技館(両国)
【日時】3月31日(日)開場14時30分/開始15時30分
【会場】両国国技館(両国)
【HP】https://www.onefc.com/jp/events/
※ONEでは大会に先駆け、ザ・リッツカールトン東京で3月28日に公開記者発表会を開催。こちらは先着250名限定で一般観覧者の申し込みを受け付け中。申し込みは( https://goo.gl/forms/bCFxDKtWfW180Na93 )からとなる。
※ONEでは大会に先駆け、ザ・リッツカールトン東京で3月28日に公開記者発表会を開催。こちらは先着250名限定で一般観覧者の申し込みを受け付け中。申し込みは( https://goo.gl/forms/bCFxDKtWfW180Na93 )からとなる。