小手伸也「自分のセンサー次第で感じ方ががらりと変わる作品」

「顔と名前は一致しないが面白い存在」から今ではすっかり「顔も名前も分かる面白い俳優」となったのが小手伸也。今回、堤真一と橋本良亮が主演を務める舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』に2人と最も多く絡む重要な役どころで出演する。
小手伸也(撮影・辰根東醐)

舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』4月20日から上演開始



 小手は昨年、月9のドラマ『コンフィデンスマンJP』にレギュラー出演。突如、脚光を浴びる存在となった。

「これまでもドラマの仕事はゼロだったわけではないんですが、単発のゲスト出演が多かったですね。でもその中で一番大きかったのは2016年の大河ドラマ『真田丸』。そこで45話中9話くらいかな、途中からラストまで参加させていただいた。9話だけだったけど僕の中では初めて長く一つのドラマにかかわらせていただいて、けっこうそこで、いろいろな年齢層の方に認知していただいたところがあります。真田丸があったからこそ、翌年の三谷幸喜さんの舞台に呼んでいただけて、その三谷さんの舞台があったからこそ、さらに別のオファーにつながり、そこから最終的に月9につながっている。そのへんは結構、とんとん拍子でした(笑)」

 演劇を多く見るファンにとっては「やっと世間が気づいてくれたか」というところ。

「僕のブレイクをどこで取るかで論争になっているところがあるみたいです(笑)。真田丸かコンフィデンスマンJPかSUITS/スーツか。あるいは仮面ライダーエグゼイドなのか。いやいやNODA・MAPにも出ていただろう、って(笑)。その都度その都度発見してくださる方がいる」

 戸惑いは?

「そんなに急にバラエティーに呼ばれても、って(笑)。もうちょっとトークスキルが上がって、人前に出ることに対しても、自分で当たり前と思えるレベルになってから出たかったです(笑)」

 小手は現在お休み中であるのだが、innerchildという劇団の主宰を務め、自ら作・演出する形で心の世界をテーマとした作品を作ってきた。そこでは心理学や精神病理といったものを題材にすることも多かった。今回の作品では2人の主人公は精神病院に送り込まれ、小手は2人を診る精神科医。なにやらかつて自分が手掛けてきた作品とジャンルとしては似たようなところがあるのでは?

「確かに精神病院の病室なのか牢獄なのか答えを明確にしないまま物語は進んでいくし、劇中出てくるオーケストラというものが妄想なのか、なにか特定なイメージを背負っている抽象的なものなのかといったことは分からない。そういう意味においては精神世界を舞台にしているような話としてとらえることもでき、自分が初期にやっていたことと近いところがあったので割とすんなり、“なるほどね。精神科医と患者の話か”というふうにとらえることができました。でも、いかんせん、内容自体が結構難しい。示唆に富みすぎているというか、海外の作品にありがちな言葉の情報量が多すぎるというか。そういう意味において、とんでもない本だなと思って、一時すごいパニックになったんです。でもちょっと違うタイミングで読んでみたら、最初の印象と真逆になりました。“あれ、こんなに分かりやすい本だったっけ? こんなにシンプルな内容でいいのかな”って。読むタイミングで全然印象が違う本だなと思いましたね」

 それは自分の体調とか心のコンディションによって?

「“分かりやす! この本”と思ったのは午前中のファミレスでした。逆に一番心を惑わされたのは午前2時の自室です。多分、すごく入り込もうとして読んだ時に迷路にはまったんだと思うんです。それが合っているかどうかは分からないんですが、情報感度というかセンサーのひねり具合で、コアとなるテーマ性みたいなものがすごく変わってくるんじゃないかと思います」
1 2 3>>>