戦争の反対は文化だ!後世に語り継がれるべき女性たちの戦争映画「あの日のオルガン」【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。夕張に行っておりました。

 ノリと遊び心でカメオ出演という形で ちょっとだけ関わらせていただいた映画が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」でファンタランド大賞作品賞という観客が選ぶ作品賞を頂きました。

『いつくしみふかき』という作品です。今後いろいろなところで目にする機会が増えてくると思うので、皆さん、よろしくお願いします。

 来年は監督として夕張に行きたいと思います。

 では今週も始めましょう。

黒田勇樹

 心無い友人が「プライベートライアン」を観た後に「めっちゃゲーセンでシューティングゲームしたくなった!」というのを聞き、「自分にもそんな感情が生まれてしまったらどうしよう」と恐ろしくなり、あの名作「ガンダム」すら「人型だけど、結局は戦車の性能とカッコよさを愛でるアニメなんだろう」と食わず嫌いしてしまうほど戦争系の作品に苦手意識を抱き、距離を置いてきた少年時代。

 大人になってから自身も戦争映画に出演することがあり、メイキングDVDのインタビューで「黒田さんにとって戦争とは?」と聞かれ「一言で語れないから何年も準備して何か月も撮影して2時間の映画作ってんだ!」と噛みついた青年時代。

 もっとも戦争を恐ろしいと思ったのは「母と暮らせば」のインク瓶が溶けるシーン。

 今回はそんな僕の戦争映画感をまたひとつ更新する素晴らしい映画に出会ったので、ご紹介させて頂きます。

 映画「あの日のオルガン」は、日本で初めて保育園児の疎開を実現させた保母さんの実話をもとに作られた作品。「怒りの乙女」と呼ばれる戸田恵梨香さん演じるしっかり者の保母さんと「おなかペコペコ乙女」と自ら名乗る大原櫻子さん演じるおっちょこちょいの保母さんを中心に描かれて行くのですが、その目線の描写が素晴らしい。

 作中でしっかりと死が描写される登場人物はかなり少ないのですが、脚本と演出の秀逸さで全世界での太平洋戦争の犠牲者総数が8000万人、東京大空襲の犠牲者が10万人、その中で園児53人を助けたということの尊さが、ぐさぐさと伝わってきます。

 おじさんは後半30分泣きっぱなしでした。

 疎開を勧める保母さんに「母親じゃないから子供と離れる苦しさがわからない!」と詰め寄る母親たちを何とか説得し成功させた疎開先で起こる様々な困難。女だからと村の顔役たちにはお酌をさせられ、ほのかに抱いた村の男性との恋心の責任を押し付けられ追い出され、最後には「戦争はどこまでも追ってくる。どうせ子供たちも殺されるなら疎開などさせず空襲で死んだ母たちの腕の中で抱かれて死なせてやるべきだったのではないか」と苦悩する姿。

 一昔前なら描かれていなかったのではないかと思われる、国内に取り残された女性たちの戦争。

 文化というのは「言葉にすること」、言葉はコミュニケーションの道具で、その最も反対にあるのが暴力、つまり戦争だと僕は思っているのですが、作中何度も理想として語られる「文化的な生活」こそ戦争への大きなメッセージ、対抗手段であり、映画も、数学や音楽と同じひとつの「言葉」と仮定するならば、この物語が「映画」という言葉にされたことは、戦争を無くすことへの大きな一歩だったのではないでしょうか?

 ああ!1200文字で戦争が語れるか!だから俺たちは何年も準備して何か月も撮影して2時間の映画作ってんだ!

 是非、出来るだけ多くの方々に観て頂きたい素晴らしい1作でした。

黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23

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