二ツ目さん数珠つなぎ【第6回】初音家左吉「寄席に出続けられれば幸せ」
初音家という亭号は珍しいですね。
「今は師匠と私しかいません。私の師匠の師匠は先代金原亭馬生と言い、落語をご存知ない方に説明すると…池波志乃さんのお父さんです。それでも分からない人は、中尾彬さんの義理のお父さんと覚えていただければ。そして、その上の師匠が昭和の名人と言われる古今亭志ん生なので、初音家は古今亭の一門なんです。ですから私は古今亭の秘密兵器と言われ、早十数年。このまま秘密のママで終わりそうな気配もありますが…。しかし、今秋には真打に昇進し古今亭になるので、むしろ秘密じゃなくなるという話も」
9月には真打昇進、さらに名前も変わる。
「古今亭ぎん志という名前になります。うちの一門の志ん生師匠が将棋好きで、弟子の名前には将棋に関係する“駒”や“馬”などが付く名前が多いんですね。その慣例に習って“ぎん”はどうかと。それで亭号も師匠と相談して“金原亭でも古今亭でも良いぞ”と言われまして、最終的に古今亭を名乗らせていただく事にしました。昔からある名前を襲名する人もいますが、こればっかりは。今はいい名前の空きがないんですよ。間のもんですから」
悩みは師匠の悪口がないところとか。
「こんなこと言ったら師匠に怒られるかも知れませんが、大変仲のいい師弟でして。師匠の弟子は私だけで、なにしろ落語家の初音家は2人だけなのですごく可愛がっていただいているなとひしひしと感じております。大体、いっぱい兄弟弟子とかがいたら、みんな師匠について愚痴とか言ってるじゃないですか。よく知りませんけど。噺家ならではのシャレではありますが、例えば真打披露興行のパーティーとかで、“師匠はあんな事言ってますが、こっちもいろいろ迷惑をこうむっておりまして…”なんて挨拶をするわけですよ。笑いに包みながら、本心で。でもね、そういうのが一切ないんです、師匠に対して。それは欠点だなって思うんですよね。だからなんか悪口を探さないといけないんですけど、好きで入門して入門後も可愛がっていただいてるんだから、あるわけがない。それってネタがないみたいで、どうかなとは思うんですけど…」