二ツ目さん数珠つなぎ【第6回】初音家左吉「寄席に出続けられれば幸せ」
贅沢な(?)悩みもありつつ、真打昇進にあたり思う事も。
「最近たまたまなんですが、すごくお世話になった方の訃報が続き、ちょっと考えるところがあって…。40半ばともなると、だんだんとそういう事も増えてくるのかなと。真打になるって、周りの人は喜んでくれるけど、自分自身は不安と恐怖のほうが大きいわけですよ。これからどうなるんだろう、大丈夫かなって。でも応援してくれる人がいる、支えてくれる人がいるっていう事が励みになったりしているんです。僕、二ツ目になったばかりのころはほとんど仕事がなかったんです。でも今は寄席の出番も増え、いろいろ呼ばれる事も多くなって、真打になるより二ツ目の上が長いほうがいいんじゃないかと思う事もあったんですよね。でも、応援してくれる人の事を思うと、そんな呑気な事を言ってる場合ではないなと。一日も早く真打披露をやって、真打になるのを楽しみにして下さっている方に恩返しをしないとと思い始めています。とはいっても、なる時期は決まっているんですけど」
真打になっても目標は変わらない。
「高座に出続けたいですね。もともと僕はテレビに出たいとか、タレントになりたいって思った事がないんです。うちの師匠にも入門する時に“弟子に取るのはいいけど、俺のところにきても不遇だぞ。テレビに出たいなら、ほかの師匠のところに行ったほうがいい”ってはっきり言われましたもん。でも僕は師匠以外は考えられなかった。タレントになりたいわけではなく、寄席芸人になりたかったし、お客様にもそう思っていただきたい。だから寄席に出ていれば幸せかなと思うんですよね、今もこれからも」