福田麻由子が映画『ラ』の壮絶な撮影現場を振り返る「1年間役が抜けなかった」

撮影・辰根東醐
 そんなに真逆の人間を演じるのに、どのように気持ちを寄せていったのか?

「物理的なところでは、リハーサルの時でも、ゆかりをイメージした服を着てやったり、普段はロックとかが好きなんですけど、女性ボーカルの曲しか聞かなくなったり…。“ユニコーンとかは聞いていられないわ”みたいな(笑)。本当に自分を根本から変えないとという思いがあり、音楽の趣味が変わるぐらいでした。ゆかりを演じるまでは、役と自分をどこか冷静に切り離そうとしていたのですが、この役に出会い、これから先、自分が役者としてどうやっていくかを考えた時に、そんな事言ってないで全部染まってみようと。ある意味、挑戦というか、すべてをこの女性に捧げようと思って演じたのがゆかりでした」


 一歩間違えば“怖い人”、でもどこかにすごく純粋なものを持っているゆかり。その演じ分けで苦労した点は?

「撮影に入ってからは、自分の見え方とか余計な事は考えたくないと思っていたので、気持ちが動くままにやっていました。ただリハーサルの時は頭で考えて、どう見えるかなど監督やほかのキャストの方と、結構話し合いましたね。ダンカンさんとのシーンも、伝わりにくいかなと思った部分の台本を、監督と話し合って変えてもらったりもしました。ただ、見ている人がゆかりに感情移入してもらうようにする必要はあまりないのかなと思っていて。どちらかというと、桜田君が演じる慎平の気持ちにお客さんがついていけるようにと思っていました。慎平を私と黒やん(笠松)が動かすという立ち位置だったので、慎平にちゃんとお客さんがついていけるようにというのは、すごく考えてやっていました」