【ライブレポート】忘れらんねえよ、恒例『ツレ伝』で見せた世界を救うパンクロック

Photo by ATSUKIIWASA

ピュアすぎる不器用さが生む「共感性」に涙



 メンバー紹介と共に、自身のことは「ボーカルは菅田将暉でお送りいたします」と自己紹介。そしてチャットモンチーのカバー『ハナノユメ』。チャットのギターボーカル、えっちゃんが大好きなことでも有名な柴田。直前のMCでもえっちゃんに初めて会った時のことを語った。

「致命的に気が合わなかった。 飲み会だったのにイジケモードに入って、本人に”もう会うことはないでしょう”なんと言ってしまった。でも、これでよかったんだ。大好きな人と気とか合っちゃあ、ダメなんですよ、だからこそロックンロールができるんだよ!」

 忘れらんねえよの精神性はまごうことなく、青春パンクだ。モテなかった自分、浪費した青春への反骨心。こんなに”エモい”リスペクトを込めたカバーを聞いたことがあっただろうか? 大好きな人に、大好きな人の歌を。あなたが聞いていないところで。ふと気づくと隣りの男性が泣いていた。自分の青春を思い出しているのだろうか。キュウソの時は女性が多かったように感じた客席最前列は、男性が多くなっていた。

 最近は小さいうちから音楽を始めて、天才なんて呼ばれるアーティストもいる。柴田は今年で38歳。青春時代にモテたくて、目立ちたくて、でもそうはできなくて、ひたすら音楽を愛した、孤独な少年がそこにいた。本来バンドとは、ライブとはこういうものだったのかもしれない。

 続いてアルバムから『世界で一番あんたは綺麗だ』。感情的な歌詞に、自分まで泣きそうになってしまった。まっすぐすぎるのだ、あまりにも。大人になればなるほど、なかなかシンプルに気持ちを伝えることができなくなっていく。これは大人のための、大人のラブソングなのかもしれない。まっすぐだったありのままのあの頃を思い出させるための。