水谷豊監督『轢き逃げ 最高の最悪な日』中山麻聖 × 石田法嗣インタビュー


 事故を起こし、悪魔の選択をしてしまった秀一。それを促してしまった輝。極限状態であってはならない選択をするという難しい役どころ。

中山「脚本を読んだときからとてつもなく難しい役だ、と思いましたね」

石田「僕も最初に自分の中で役を決め込んでしまったこともあって本当に難しかったです。あるセリフの言い方が何度やってもハマらず、監督に頭を抱えさせてしまったときがあったんです。やり直すほど沼にハマってしまい “終わった…”と思いかけたとき岸部一徳さんが“監督が言っているのはこういうことだと思うから、こういうふうに言ってみたら”と、声をかけてくださったんです。なるほど、と思ってその通りにやってみたら1回でOKが出た。一徳さんには見えていたんだ、僕は何も見えてなかったんだと気づきました。僕も監督のように“一徳兄さん!”と呼びたくなってしまいました(笑)。一徳さんは“これは誰がやっても大変な役だから時間かかってもいいから監督と向き合って頑張って”と言ってくださって本当にうれしかったです」

中山「いいなあ」

石田「いいでしょ(笑)」

 難しい役どころを演じるうち、秀一と輝そのものになっていった2人。

中山「法嗣とは、撮影以外でも、よく2人でいましたね。普通に話をしているんですが、たぶんきっと輝と一緒にいたかったのかなって。ロケが長かったのでその間、僕自身が秀一でずっといたのかも。今振り返ってみると中山麻聖と宗方秀一の境界線が無くなっていたような気がします。1人でいると芝居のことを考え込んでしまいそうで、そんなときに法嗣と一緒にいたいと思ったのも、秀一が輝と一緒だと安心するからだったんだろうな、と。一番最初に会ったときのことを今でも覚えているんですけど、エレベーターが開いてそこに法嗣がいて、僕は瞬間的に“輝だ”と思ったんです」

石田「それはうれしいな(笑)。僕は、事故を起こした直後のシーンの麻聖との芝居が生々しくて怖いくらいだったのが忘れられない。麻聖が本当に絶望した秀一そのもので、罪を共有して秀一を逃がすという判断を、理屈を超えて自然と演じることができたんです。本当に秀一が麻聖で良かったと思いました」

中山「そんなこと初めて言ったね」

石田「言えないよ、恥ずかしいもん(笑)」

中山「お互いにメンタルがいっぱいいっぱいだったよね。でもだからこそ同じ気持ちを共有できたし頼りに感じることができたんだと思う」

石田「水谷監督は全部見越して僕らを選んでくれたのかもね」