パラトライアスロン谷真海、世界の壁感じ悔し涙
オフ後、初となる国際大会で緊張していたという谷。スイムでは第2集団をキープした 写真・佐々木理佐
失いかけた、東京大会への道
谷のクラスは、PTS4。実はこのクラスは、昨年11月までパラリンピックの出場資格を失っていた。競技人口の少なさから、実施種目から除外されていたのだ。谷はアテネ、北京、ロンドンと陸上競技の走り幅跳びでパラリンピックに3度出場し、2016年からトライアスロンに転向。東京大会の招致にも参加し、4大会目の出場を目指していた谷にとって、苦しい時間が続いた。
その後、一時はオフに入っていたものの、昨年11月のITU国際トライアスロン連合の理事会で、すべての障害クラスの選手に出場の可能性が与えられるようルールが改正。PTS4は、障害程度が軽いPTS5と混合で実施されることが決まり、東京大会への道が拓けた。
バイクとランの義足を一本化し、移動時間を49秒までに短縮。トランジションタイムの短さは同レースで1位だった 写真・そうとめよしえ
世界との実力差を感じたレース
迎えた今シーズン初の国際大会。横浜大会では、PTS3〜5クラスが同時にスタートし、ルール改定以降、PTS5の選手と肩を並べて走る初の機会となった。「PTS5と同じスタートなので、最初から力抜かずに思い切っていこうと思った」と谷はレース前の心境を振り返る。
得意のスイムまでは第2集団に位置し、良い流れをキープ。しかし、トランジション(種目から種目への移動)で7人に抜かれ、課題としているバイクで、さらに3人に抜かれる展開に。最終的な順位は、PTS4クラスでは2位だが、同時スタートした他のクラスの選手と合わせると、6位。レースを終えた谷の顔に、笑顔はなかった。「完全に力負けしたな、という感じ。全然敵わなかった。力の差を感じた」と涙ながらにコメント。東京パラリンピックに向けてより本気度が増した海外選手を前に、世界の壁に屈した結果となった。
義足を一本化し、タイムを短縮
一方で、新たな変化が実を結んだ場面も。「第4のパート」とも呼ばれるトランジションは、次の種目へと移る重要なポイント。トライアスロンは、選手がウエットスーツを脱いだり、シューズを履き替えたりする時間もレースタイムに含まれるため、合計タイムに大きく影響するトランジションは、いかに時間を短縮するかが戦略の鍵だ。
今シーズンから谷は、バイクとランの義足を一本化。これまで3回あった履き替えを2回に減らし、タイム短縮を試みた。「バイクからランへのトランジションは、スムーズにいった。タイムが縮まるので良かったと思う」と一本化への手応えを感じていた。
課題は、義足への慣れ。一本化にしてから、わずか2ヶ月ということもあり、バイクで漕ぐときにパワーの入りにくさを感じたという。「グラグラしていて、パワーが伝わりにくい感じがあった。これまでローラーバイクで固定して強化してきたが、まだ実走に弱い可能性があるのかも。そこは見直していきたい」と振り返った。
沿道の声援に応える谷 写真・大藪順子
気になる東京大会へのゆくえ
来月から、パラトライアスロンは東京2020大会出場に向けた選考期間が始まる。海外での選手権に加え、8月には、本番の会場であるお台場海浜公園でワールドカップが開催される。これまで3度パラリンピックを経験する谷だが、やはり自国開催への思いは強い。「今回、自分の国で試合をする力強さ、声援に後押しされるのを感じた。もし東京大会に出られるのなら、そのパワーを感じたい」。思いを馳せたその大舞台に、彼女は立てるのか。世界の壁を越えて、新たな景色を私たちに見せてほしい。
(取材と文・丸山裕理)