整理収納アドバイザー・井田典子が教える“だ・わ・へ・し”の整理術【Be Style】



 なるほど……でも、お気に入りのTシャツがあれば、また買ってしまいたくなる自分がいる。そういうときは、「何着持っているか、すっと答えられるかを考えてみて」と、井田さんはアドバイスする。

 「数えられない、思い出せないのであれば、一度、整理整頓する必要があるということ。私は、片づけって“整理9:収納1”だと思うんですね。整理ができないから収納できなくなる。無理やり収納しても、整理ができていない場合は、どこに何をしまったかを覚えていない。片付かないのは、心が片付いていないから」

 整理整頓は、お金をかけなくてもできる必ず良くなることの一つ――。井田さんは、「片づけは0円リフォーム」と微笑む。しかし、根っからの片づけ好きであったわけではない。

 「息子が高校1年生、2年生のときに学校へ行かなくなりました(苦笑)。息子との距離も広がる一方で悪循環の一途を辿るばかり。落ち着かない、やり場のない気持ちを抑えようと思って家事を始めたら、知らない間に引き出しを一つきれいに整頓していたんですね。気休めかもしれないけど、心が落ち着く自分がいたんです。片付けという目に見える作業をすることは、心の整理や自分と向き合うことにつながるのかもしれない。落ち着かないときは片づけをしてみる。次第に自分を見つめ直せるようになり、息子との関係も変わってきました」

見えないものを整理する前に、目に見えるものから整えていく



 引っ越しをするために部屋を片付けていると、誰しも、自分と向き合う瞬間があるはず。メモが残る昔のノートを見つけると、「このときはこんな仕事をしてたなぁ。ずいぶん、成長したかも」。旧友と一緒に映る写真を見ると、「懐かしいなぁ。何やってるんだろう……連絡してみようかな」。片づけをすると、過去の自分と、今の自分が対話しているような気持ちになれる。まさに、心の整理。片づけは、自分と向き合う「セラピー」なのかもしれない。

 「子どもの成長などは最たる例ですが、どうやっても自分の思い通りにならないことがあります。そもそも誰かを思い通りにしようと考えることが間違っているんですよね。ところが、なかなか気が付けないときがある。でも、目の前のものや時間の使い方はコントロールできる。目に見えるものから整えていくだけで、大分、気持ちって変わってくるんですよ」



 羽仁もと子、という女性をご存じだろうか? 婦人之友社を創業した日本人初の女性ジャーナリストであり、家計簿の考案者としても知られる、近代日本における家庭生活の充実向上を推進した閨秀作家だ。「彼女の教えは、そのまま現代に通用します。私も、大きな影響を受けている一人」。井田さんは続ける。

 「“片付かないのは心の内が片付かないからです”という言葉を、今から90年以上も前に残しているんですね。“三度不自由してから買え”も金言。ぐうの音も出なくなる言葉の数々は、今を生きる私たちにもものすごく刺さる(笑)。本質的なものって、昔も今も変わらないということを教えてくれる。モノが豊かになったから片付けられないのではなくて、心に余裕がなかったり、考える力を失っていたりするから片付けられないんです」

 心にゆとりを持つことこそ、生活をアップデートさせていく上で欠かせない。捨てるのが申し訳なく感じるご祝儀袋や年賀状は、「写真に収めて、データ上で保管すれば大丈夫。大切なのは、ありがとうという気持ち。それを留めておけば、捨ててもいいんです」。井田さんのアドバイスは、ものすごく現実的で優しい。

 「整理をすることで心のスペースが広がれば、そういう風により考えられるようになる。“片づけの時間”って来ないんですよ。みんな、同じ24時間という時間の中で一日を過ごして、みんな、自分がやりたいことを率先して行う。60歳になっても、70歳になっても、片づけの時間は来ないんです(笑)。だからこそ、日々、一つでもいいから整理する。小さなことでもいいんです。その積み重ねが、心にゆとりをもたらす生活につながると思います」


 
アクティブオーガニック「Be」presents「BeStyle」は、TBSラジオで、毎週土曜午前5時30分~6時にオンエア。radikoでも聴取可。詳しくはHPを参照。
https://www.tbsradio.jp/be/

また、当日の模様は、以下のYoutube「Be Style」チャンネルからも視聴可能。
あなたの「なりたい」が見つかるかも――。
https://www.youtube.com/watch?v=dBxsciBBxmI&feature=youtu.be


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