【田口桃子の「SOD女子社員は脱がなきゃダメですか?」】第2回 「ADはブスでなければだめですか?」

SODでは、撮影やイベント運営など、デスクワーク以外の仕事も。写真は4月に行われたイケメンフェスティバルのスタッフ集合の様子
 ADという仕事をご存知でしょうか?

 アシスタント・ディレクターの頭文字をとったもので、私のいる会社では、映像制作の現場で撮影が滞りなく進むように準備をしたりサポートをしたりするのが主な業務です。

 アダルトビデオの撮影スタッフは男性が多いのですが、弊社では新卒採用も行っているので、大学を卒業したばかりの女性もいます。

 現場は、早朝から始まって夜遅くまで続くので体力がいりますし、重い荷物を運んだりすることも多いです。

 物理的には、ADという仕事は男性よりも女性のほうが、不利なことが多いのかなと思います。


 以前、ある女性ADが、「ロケ現場では化粧もしない、地味な格好をする、女性としての自己主張をしない」ということを新人女性ADに教えていたのを目にしました。

 これを聞いて、皆さんはどう思いますか?

 なぜADというだけで女性ということを放棄しなければならないのか?と思う方もいるかもしれませんね。

 現場で女性らしく働くことを否定している、さらにそれを後輩にも押し付けるなんて、という見方もあるかもしれません。

 私は単純に、「作品には映らないそんな部分にまで気を使うほど、彼女は作品に熱い思いがあるんだ」と思いました。

 実際に、ロケ現場では華美な格好は不向きです。

 足元は動き回れるようにスニーカーのような靴が良いですし、レースなどのひらひらした生地は機材にひっかかってしまったりして危険です。ミニスカートやショートパンツも、足が出ているので、ものを落としたりぶつけたりして怪我になりやすいです。

 少しでも男性スタッフの足を引っ張ることになったら、撮影が滞るのではないか。

 少しでも自分に注目されることがあったら、女優さんに迷惑をかけることになるのではないか。

 彼女の発言は、そんな撮影現場での不安を取り払うためのものだったのだと思います。

 とてもじゃないですが、着飾ったら女優さんより目立ってしまうからなどというおこがましい理由ではありません。


 これまで、社会において女性が生き抜くためには、「男性の求める女性らしさを売りにする」か、「男になるか」という極端な選択肢しか、私たちには見えていませんでした。

 特にADの仕事を全うして評価を得るには、後者になるしかなかった。

 それゆえ彼女は、現場では「ブスになる」ことを意図的に心がけていたのでしょう。

 とはいえ、多様性が認められ、働き改革も進んでいる現在は、女性らしさを捨て去る必要はないのではないかと思います。

 好きなTシャツを着たっていいし、派手すぎなければメイクだってしてもいいのでは。

 女であることを言い訳できない厳しい世界だし、女だということに甘えていると思われたくない。

 でも本当は誰もブスになる必要なんて、ないのではないでしょうか。
田口桃子(たぐち・ももこ)
GIRL’S CHプロデューサー。2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2012年よりGIRL’S CHの立ち上げに携わる。
以来現在まで、GIRL’S CHの現場リーダーとしてサイト運営をしつつ、オリジナル動画ではレポーター出演等をすることも。