女子大生に聞いた「エモい」の意味とは…「ウチらのエモいはウチらのもの」?
この中で「エモい」写真は一番下の写真だけだという。顔の映っていないレトロ風な写真を選んだが……女子大生にとっては「夜=エモい」なのだろうか。
キラ子「上の2枚はなんか、よくわかんないな。誰?って感じだし、なんとも思わない」
カル子「雰囲気がおしゃれなのと、エモいのは違う気がするんですよね。自分の写真じゃなくても、夜の写真とか花火とか、昔自分も見たことがあるような景色ならエモいってなるんですけど」
キャピ子「てゆーか、自分と関係ない写真はエモくないです。どんなものでも、自分のこととして考えてみて初めてエモいってゆーか」
キラ子「あ、わかる。てゆーか、”わかる”ってならないとエモくない気がする」
キャピ子「確かに。日常会話で使う時も、なんかいい!わかる!ってなった時にエモいって言ってる気がする」
…なんか、重要な一言が出てきた気がしたぞ。
ウチらが”エモい”って思ったものが”エモい”の。
LINE検索で”エモい”というワードを検索してもらうと、全員が2016、7年…2年ほど前から”エモい”を使っており、同じようなタイミングで”エモい”というワードが流行し、会話で使い始めていたようだった。
さらに、そのままそのエモい、がどんな風に使われているのかも見せてもらった。
友人の優しさにエモいという感情を抱いた、という会話だ。この使い方に関しては3人とも違和感がないということだった。なるほど分かってきたような気がした。
彼女たちの中では、エモいは共通言語ではあるが、その意味を言語化することは難しい。”ヤバい”と一緒なのである。語義が広すぎるのだ。ヤバいがぼとんどのコトへの感想に対して使えるものであるのと同じように、エモいもそうであって、それがどうエモいのかは本人たちにも説明が難しい場合もある。
ただ、座談会から感じたのは「別に他の人にエモいって思ってもらえなくても、私が思っていればそれでいい」という、若者たちの強い意志だった。だから、彼女たちは”エモい”の語義を追求しない。SNSのタイムラインで、「それエモくなくね?」と思う文脈もあるという。しかし、それを人に伝えることはしないという。若者の中でも、「人それぞれ”エモい”の意味は違う」という認識なのだ。
オトナに搾取された”エモい”は、もう若者の語義ともずれている?
いつだって、語義を特定しようとしたり、その言葉を商業的に利用していくのはオトナだ。今、雑誌やSNSにを見れば「エモいスカート」やら「エモいタピオカ」まで存在する。しかし、それは”エモい”を流行させた彼女たち自身からしても不本意なことで、そんなものをエモい、とは思わないという。
だからなのか、彼女たちは「てゆーか、エモいももう古い気がする」と言った。去年はめっちゃ使ってたけど、なんかもう違うんだそうだ。
テレビやマスコミにあふれたエモいは、オトナが作ったエモいだ。それはもう、彼女たちが思うエモいではなくて、そうやって結局オトナに真似されて流行したエモいは、もう彼女たちの共通言語とは別のものになってしまっているのだ。
オトナはいつも、若者言葉をバカにする。「私たちにはちょっと分からないわ」と言いながら、若者の語義を理解しないまま、その流行をビジネスに利用する。若者はそうしていつでも、流行をオトナに搾取されているのかもしれない。
エモいの意味については、結局言語化できなかった。しかし、若者言葉への若者の意見は、普段見えてこない若者の声なき主張を垣間見させてくれたのだった。
(取材と文・ミクニシオリ)