サラリーマンは辛苦な稼業と来たもんだ『セミ』【著者】ショーン・タン



 セミ おはなし する。
 よい おはなし。
 かんたんな おはなし。
 ニンゲンにも
 わかる おはなし。(帯文より)

 どんよりした灰色の壁と床が囲む、まるで要塞のようなオフィス。そこら中に散らばった書類の間隙を縫うように、しわだらけのスーツ姿で一匹の「セミ」が立ち尽くしている。言い知れぬ不穏な気持ちを抑え読み進めると、どうやら彼はある会社で、勤続年数17年を数えるサラリーマンだという。どんなに理不尽な目に遭おうとも、不平不満を言わず真面目にコツコツと、ニンゲンの分まで仕事をこなす。時折「トゥクトゥクトゥク!」と声にならない声をあげながら……。
1 2 3>>>