カリスマ書店員3人が日比谷でトークイベント“マジ絶望”な世の中を生き抜くヒントとは?〈前篇〉

左から聞き手の新井見枝香、花田菜々子
花田: 本をすすめるとか、売りたい本を売るっていうのは3人に共通すると思うんだけど、それはなんでなの?
長江:人のためになれたらいいなっていうところはある。人のためになりたいとは思っても、カンボジアに行って地雷を除去しようとは思わない。自分が本を読んだり文章を書いたりするのが得意だから、抵抗なくできることで誰かが助かったらいいなって思うし、それが僕が本を売っているモチベーションかな。もちろん売り上げのために売る本もあるけど、この本が売れたら買ってくれた人が助かるかもしれないって思えなかったら、本をすすめられない気がする。
花田:私の場合は迷惑をかけてるとは思ってないけど、基本的にただ生きているだけの自分には価値がない。だけど本っていう、自分の価値とは違うすごいものがあって、それを売ることによって人の役に立つと自分がいてもいいと思える。自己承認欲求というか、認めてもらうためにやっているかというと、そんなにマジでもないんだけど(笑)。
新井:すごい好きな小説を読むと、本当はそこで終わりにしたい。“新井賞”(※)は「読んだ人が救われたらいいな」ってところまで全然いかなくて、書いた人のことしか考えてない。人のことはどうでもいいんだけど、書いた人は生きていかないといけないから、書店にいるしちょっと(仕掛けを)やったらっていう発想で。

※注:“新井賞”とは、新井がおもしろかった本を個人的に選定して贈る賞のこと。芥川賞・直木賞とほぼ同時に発表のうえ本気で販売促進を行うが、賞状や賞金などは設けていない。第10回は初の海外小説『三つ編み』が受賞した。