森口博子、ガンダムへの恩と愛を語る 「人生のターニングポイントには、いつもガンダムがいてくれた」
小学生のとき両親が離婚。以来、森口さんを含む4人姉妹を女手一つで育てる肝っ玉母さんの助言は、彼女の肩の力を抜く、絶大な説得力があったと振り返る。その言葉を受けて臨んだ『勝ち抜き歌謡天国』(NHK)で、見事に準優勝。レコード会社から声が掛かり、『機動戦士Zガンダム』の主題歌オーディションにつながった。
「自信を失いかけていた私に、救いの手を差し伸べてくれた存在がガンダム。私にとっても大きなヒーローなんです。中学校の卒業アルバムの年表に「ガンプラブーム」と明記されていた作品。社会現象になるような作品の主題歌を担当させていただけるなんて、ラッキーでした! 本当に夢のようでした」
レコーディング時に、今でも思い出す言葉があるという。
「ディレクターさんから、「語尾を大切に歌ってほしい。きっとこの歌は、何十年と経った後も、君が歌い続けられる大切な曲になるからね」って伝えられたんです。17歳の私にとって、たしかに歌詞は難解でした。でも、大人になるにつれて作詞家の売野雅勇さんが込めた思いが心の底に響く。ずっと大切に歌わせていただいています」
昨年、NHK-BSで放映された『発表!全ガンダム大投票』で、361曲(!!)という膨大なガンダムソングの中から、ファン投票によって一位に選ばれたのは、「水の星へ愛をこめて」だった。アニソンがなぜ愛され、なぜ人々の心をつかむのか。アニソンそのものにも、物語があることを教えてくれる。
歌を歌いたい、その気持ちがバラエティで実を結ぶ
デビューを果たし順風満帆……かと思いきや、わずか1年後、高校卒業間近に、「才能がないから実家のある福岡に帰らせた方がいい」と、所属事務所からリストラ通告を受けてしまう。
「80年代はアイドル全盛時代だったので、次から次へと新しいアイドルが誕生する。今では考えられないくらい見切りをつけるスピードも速かったんです。私は主題歌を出したことでお役御免という状況でした。でも、もっと歌いたかったし、歌手として活動をしたかった。それで、「何でもしますから帰さないでください」って懇願して、なんとか保留にしていただいたんです」
事務所が取ってきた仕事は、「オスのロバを口説く」というバラエティ番組の企画だった。ロバの耳に息を吹きかけるなどあの手この手でロバを誘惑した結果、興奮したロバは大暴走。VTRは大ウケ。バラエティアイドル・森口博子が誕生した瞬間だった。このままでは終われない……「まだだ! まだ終わらんよ!!」、その気持ちが実を結んだ。
「とにかく顔と名前を覚えてもらわないと始まらない。同期の女性アイドルの中には、莫大なお金をかけてプロモーション展開をする子も珍しくなかったのですが、私は一切なかった(笑)。自分で考えないといけないので、バラエティに出始めた当初は、“三つ編み”“リボン”“帽子”という3点セットで統一。少し浸透したら“リボン”“帽子”だけにして、そこそこ覚えてもらえるようになったら“帽子”……という具合に、顔を覚えてもらえるように引き算をしていきました。やりたいことをやるためには、今できることを全力でやらなきゃいけない。 そして、できることにも段階があるんですよね」