パラアーチェリー、ゲリラ豪雨に暑さ対策。自国開催を味方にできるか

W1女子優勝の岡崎愛子
台風15号の影響も

この日のさいたま市の最高気温は、32℃。台風15号の接近に伴って不安定な天候も続いた。競技開始から2時間経った正午すぎには、突然のゲリラ豪雨で雨風が吹き付けたほか、雨雲が過ぎ去ったあとは直射日光が照りつけるグラウンド。コンディション管理が難しい選手もいた。

一般的に、頸髄損傷など障害の重いクラスの選手たちは、自身で体温調整をすることが難しい。W1男子優勝の仲喜嗣は「身体に熱がこもっちゃって、サウナ状態で試合をしているような状態でした」と大会後、明かした。

また、W1女子優勝の岡崎愛子は、「一度暑くなると、身体の熱が抜けない。今日みたいな雨の後の湿気を含んだ暑さは特にそう。身体をどう冷やすか、こもらせないのが大事だと思いました」と対策の必要性を語った。
リカーブ女子優勝の重定知佳
風対策も重要だ。アーチェリーは風が吹くと、弓を支える腕が揺れてしまうため、的を狙いにくくなる。パラリンピック本番会場の夢の島公園も、ベイエリアに位置するため、風が強いことが予想されている。リカーブ女子優勝の重定知佳は、「体重を増やすのもそうですし、体幹を鍛えるのもそう。夢の島も風が強いと思うので、対策していきたい」と今後の課題を語った。
リカーブ男子優勝で3連覇達成の上山友裕
東京パラへ自信

そうしたなか、力を発揮したのは、リカーブ男子優勝で3連覇を達成した上山友裕。「連覇が難しいスポーツのなかで、3連覇できたことはうれしい」と喜びを語った。今年6月の世界選手権でパラリンピック内定を勝ち取り、そこから道具やフォームをいちから見直してきたという。風対策には強度の高い弓を採用し、「風の影響は受けにくいなと思います。むしろ、風が吹いてくれた方が僕にとっては有利ですね」と手応えも感じさせた。

パラリンピック初出場のリオ大会では、7位だった上山。そのときの経験が、現在の原動力だ。「リオのとき、会場の人がブラジルの選手を応援する力を感じた。それからずっと“満員のなかで金メダル”と言い続けてきた。いま夢が目標に変わりつつある。リオで出られなかったミックス戦とともに、Wメダルをとりたいですね」と来年へ思いを馳せた。

暑さや急な天候変化への対策など、新たな課題を発見できた今大会。自国開催を味方に、選手たちはそれぞれの表彰台を目指す。

(取材・文 丸山裕理)
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