パラカヌーテスト大会で見えた競技会場の課題。「多目的トイレ増やしてほしい」の声も

会場となる江東区出身の瀬立。地元でのメダル獲得が期待される21歳
 カヌーのスプリント種目は、パドルを使ってカヌーを漕ぎ、速さを競う水上での競技。1艇に1人が乗り、8艇が一斉にスタートする。パラリンピック競技となっているのは障害物のない直線コースで着順を競う個人200メートルスプリントで、リオ大会で行われたカヤック種目に加え、東京大会では、ヴァー種目が加わる。

 8月にハンガリーで行われた世界選手権では、女子カヤックの瀬立モニカ(KL1クラス)が5位に入り、6位以内に与えられる東京パラリンピックの出場枠を獲得。カヌーでパラリンピック出場日本人第一号となった。この日も「海外の選手が来るので実力を試せるいい機会ですね。この会場でできる最後のレースになるので、気合いを入れて臨みたいです」と意気込みを語った。
オーストラリアのカーティス・マグラス。リオデジャネイロパラリンピックで金メダルに輝いたカヌー王者。
 前回リオ大会の金メダリストも来日した。13日の男子カヤックKL2クラス決勝レースで2位につけたカーティス・マグラス(オーストラリア)は、「良い建物で練習できてうれしい。東京に向けて良いアドバンテージになる」とテスト大会を振り返った。

 一方、選手からは競技会場についての意見も聞かれた。会場となる海の森水上競技場は臨海部に位置し、海風が強いのが特徴だ。男子カヤックの加藤隆典(KL2クラス)は「これだけ海に近い会場は海外でもなかなかないですね。一番嫌なのは横風。バランスを取れなくなってしまうので。海水の塩分で“カヌーが浮く”と話す選手もいました」と、選手ならではの視点を語った。
男子カヤックの加藤隆典(KL2クラス)。現在は、主戦場をヴァー種目に移し、パラリンピック出場をねらう
 またバリアフリーに関しての意見も上がった。「多目的トイレを増やしてほしいですね。建物内に多目的トイレがひとつ、とかしかなかったので。特にレース前は利用者が集中すると思う。これだけ車いす利用者が一堂に会する機会もなかなかないので、仮設でもいいから増やしていただけると助かります」と語った。

 海の森水上競技場では、そのほかにも、猛暑対策として雪を降らせる実験が行われるなど、安心・安全な競技運営に思案が続いている。バリアフリーや暑さ対策、アスリート・ファーストの視点。今後はテスト大会で見えてきた課題の解決が求められる。

(取材・文 丸山裕理)
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