【徳井健太の菩薩目線】第38回 欅坂46は、ジョン・レノンのような宗教性を持つからこそハマる
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第38回目は、ドーム公演を終えた欅坂48について独自の梵鐘を鳴らす――。
去る9月18日、19日。欅坂46の東京ドーム公演があった。ライブに行くつもりだけど、この原稿を書いている現段階では、どのような顛末になったのか知る由もない。楽しみであり、怖くもあり。見終わった後、俺は一体、どんな顔をしているんだろう。
欅坂46は、アイドルであってアイドルじゃないんだよね。語弊を恐れずに言うのであれば、どこか宗教的な魅力が漂う。ここでいう宗教的というのは、ジョン・レノン的な世界観とも言い換えられるかもしれない。センターに立つ平手友梨奈さんは、俺には時折、ジョン・レノンに見えるんだ。意図しているのか、意図していないのか、存在そのものが社会的メッセージ。
このご時世、なんとも理不尽な世の中だけど、結局、みんな嫌々ながら従ってしまうじゃない。「どうせ頑張ったところで……」と分かっているけど、止められない。だって、何かを放棄することの方が、よほど不安だからね。ところが、平手さんは「やりたくない」と平然と言ってのける。社会の雰囲気に対して、ぬるっと反抗する。その姿に、俺を含めたファンである迷える子羊は熱狂する。もう、入信するしかないんだよね。
アイドルは、英語表記をするとidolと綴る。元々の意味は、偶像、偶像神、偶像視される人。欅坂は、まさに語源寄りのアイドルなんだ。アイドルであってアイドルじゃない。この欅坂46の神秘性を際立たせているのが、日向坂46だから面白い。もともと、「けやき坂46(ひらがなけやき)」と呼ばれていたグループで、もちろん、彼女たち自身も魅力的なグループだよね。
彼女たちは、欅坂46の後にプロデュースされたグループだけど、欅坂とは違ってアイドルらしいキラキラとした太陽のようなメンバーが揃う。今では欅坂46を超えるほどの人気を持つようになっているけど、面白いことに日向坂46が輝けば輝くほど、月である欅坂46が妖しく光るんだ。そして、月の裏側を覗くような神秘性と怖さを体験しているからこそ、日向坂の「陽性」がまた際立つ。
俺は、欅坂46のセンターは、ジョーカーを演じるくらい神経をすり減らす大役だと思うの。ジョーカーを演じるにあたって、ジャック・ニコルソンは大きな負担がかかることを忠告した。欅坂46の中心も、それくらいダークサイド・オブ・ザ・ムーンだと感じる。虚実はさておき過呼吸に陥ることは、関心のない人からすれば不謹慎に映るのかもしれないけど、ファンからすれば不自然じゃないんだ。長濱ねるさんが卒業したことも、妙に納得してしまう。
現代社会に反抗するようなパフォーマンスや世界観は、パンクであって、クーデター感が漂う。日向坂46が、キン肉マンやロビンマスクをはじめとした正義超人だとしたら、欅坂46はキン肉アタル率いる超人血盟軍なんだよね。日向坂46のメンバーは原宿で遊んでいても違和感がないけど、欅坂46のメンバーが原宿に出没する姿は想像できない。板橋本町とか滝野川にいそうなんだ。10代のかわいらしい女の子が、キン肉アタル、アシュラマン、ブロッケンJrらのように戦っているんだから、若い世代が熱烈に応援してしまうのは無理もない。
俺の相方である吉村が欅坂46に対する発言で炎上していたけど、彼女たちに形式的なアイドルらしさを求めても意味などない。バラエティ一筋で生きてきた陽性の吉村とは、相容れるわけがない。吉村は、日向坂46と仕事をするべきなんだ。
先述した東京ドーム2Daysも気が狂っている。今回の欅坂46の「夏の全国アリーナツアー2019」は、横浜アリーナ、大阪城ホールという具合にアリーナクラスを巡るツアーだった。ところが、“追加公演”をぶち込むや、まさかの東京ドーム2Days――。どうなってしまうのか分からないという意味では、俺は『浅草橋ヤング洋品店』の伝説企画「江頭グランブルー」以来の衝撃を目にするかもしれないと、絶賛興奮中だ。
明らかにハードルが高く、とてつもないプレッシャーの中、彼女たちがどう乗り切るのか。長濱ねるはいない。平手友梨奈は怪我。危機的状況の中で、少女たちの覚醒or闇落ちのどちらかを目撃させる……という社会実験。すでに俺が、過呼吸気味。
生物って、とてつもない状況だからこそ進化する。 制約は、イノベーションの母とも呼ばれている。臨界的なシチュエーションだからこそ、革新が生まれるように、ドーム前の欅坂46を取り巻く状況は、「何かが起こる」という予感しかしない。とてつもないプレッシャー。俺なんかは恐ろしくて体験したいとも思わない。もっとも、体験すら叶わない。そんな限界点を目指して10代の女の子たちが突入していく様を見てしまうと、やっぱり異様なほどカッコ良いんだよね、欅坂46ってさ。
欅坂46は、アイドルであってアイドルじゃないんだよね。語弊を恐れずに言うのであれば、どこか宗教的な魅力が漂う。ここでいう宗教的というのは、ジョン・レノン的な世界観とも言い換えられるかもしれない。センターに立つ平手友梨奈さんは、俺には時折、ジョン・レノンに見えるんだ。意図しているのか、意図していないのか、存在そのものが社会的メッセージ。
このご時世、なんとも理不尽な世の中だけど、結局、みんな嫌々ながら従ってしまうじゃない。「どうせ頑張ったところで……」と分かっているけど、止められない。だって、何かを放棄することの方が、よほど不安だからね。ところが、平手さんは「やりたくない」と平然と言ってのける。社会の雰囲気に対して、ぬるっと反抗する。その姿に、俺を含めたファンである迷える子羊は熱狂する。もう、入信するしかないんだよね。
アイドルは、英語表記をするとidolと綴る。元々の意味は、偶像、偶像神、偶像視される人。欅坂は、まさに語源寄りのアイドルなんだ。アイドルであってアイドルじゃない。この欅坂46の神秘性を際立たせているのが、日向坂46だから面白い。もともと、「けやき坂46(ひらがなけやき)」と呼ばれていたグループで、もちろん、彼女たち自身も魅力的なグループだよね。
彼女たちは、欅坂46の後にプロデュースされたグループだけど、欅坂とは違ってアイドルらしいキラキラとした太陽のようなメンバーが揃う。今では欅坂46を超えるほどの人気を持つようになっているけど、面白いことに日向坂46が輝けば輝くほど、月である欅坂46が妖しく光るんだ。そして、月の裏側を覗くような神秘性と怖さを体験しているからこそ、日向坂の「陽性」がまた際立つ。
俺は、欅坂46のセンターは、ジョーカーを演じるくらい神経をすり減らす大役だと思うの。ジョーカーを演じるにあたって、ジャック・ニコルソンは大きな負担がかかることを忠告した。欅坂46の中心も、それくらいダークサイド・オブ・ザ・ムーンだと感じる。虚実はさておき過呼吸に陥ることは、関心のない人からすれば不謹慎に映るのかもしれないけど、ファンからすれば不自然じゃないんだ。長濱ねるさんが卒業したことも、妙に納得してしまう。
“何かが起こった”はずの東京ドーム2Days
現代社会に反抗するようなパフォーマンスや世界観は、パンクであって、クーデター感が漂う。日向坂46が、キン肉マンやロビンマスクをはじめとした正義超人だとしたら、欅坂46はキン肉アタル率いる超人血盟軍なんだよね。日向坂46のメンバーは原宿で遊んでいても違和感がないけど、欅坂46のメンバーが原宿に出没する姿は想像できない。板橋本町とか滝野川にいそうなんだ。10代のかわいらしい女の子が、キン肉アタル、アシュラマン、ブロッケンJrらのように戦っているんだから、若い世代が熱烈に応援してしまうのは無理もない。
俺の相方である吉村が欅坂46に対する発言で炎上していたけど、彼女たちに形式的なアイドルらしさを求めても意味などない。バラエティ一筋で生きてきた陽性の吉村とは、相容れるわけがない。吉村は、日向坂46と仕事をするべきなんだ。
先述した東京ドーム2Daysも気が狂っている。今回の欅坂46の「夏の全国アリーナツアー2019」は、横浜アリーナ、大阪城ホールという具合にアリーナクラスを巡るツアーだった。ところが、“追加公演”をぶち込むや、まさかの東京ドーム2Days――。どうなってしまうのか分からないという意味では、俺は『浅草橋ヤング洋品店』の伝説企画「江頭グランブルー」以来の衝撃を目にするかもしれないと、絶賛興奮中だ。
明らかにハードルが高く、とてつもないプレッシャーの中、彼女たちがどう乗り切るのか。長濱ねるはいない。平手友梨奈は怪我。危機的状況の中で、少女たちの覚醒or闇落ちのどちらかを目撃させる……という社会実験。すでに俺が、過呼吸気味。
生物って、とてつもない状況だからこそ進化する。 制約は、イノベーションの母とも呼ばれている。臨界的なシチュエーションだからこそ、革新が生まれるように、ドーム前の欅坂46を取り巻く状況は、「何かが起こる」という予感しかしない。とてつもないプレッシャー。俺なんかは恐ろしくて体験したいとも思わない。もっとも、体験すら叶わない。そんな限界点を目指して10代の女の子たちが突入していく様を見てしまうと、やっぱり異様なほどカッコ良いんだよね、欅坂46ってさ。
◆プロフィル……とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。