杉山愛が教える“3つ”の子どもとの向き合い方 「真剣に」「リミットをつけない」「待つ」



 「本当にテニスが大好きなんですよね」

 そうまぶしく笑うのは、杉山愛さん。日本人選手として初のWTA(女子テニス協会)ダブルス世界ランキングで1位を獲得、日本人初のシングルスとダブルスの同時世界トップ10入りを果たすなど、日本テニス界を語る上で欠かせない人物だ。テニスを始めたのは、4歳のときと振り返る。

 「両親が趣味でテニスをプレイしていたので、一緒に遊んでみたことがきっかけでした。体操教室やクラシックバレエ、フィギュアスケートなど、いろいろ習っていたのですが、一番楽しかったのがテニス。やればやるほど楽しくて、小学校2年生くらいから、将来は海外で活躍するプロテニスプレイヤーになりたいなって考えていました」

 めきめきと頭角を現し、15歳の時、日本人選手として男女通じて初のITF(国際テニス連盟)ジュニア世界ランキング1位を記録するなどトップジュニアの仲間入りを果たす。ところが、WTAの世界ランキングは何と1000位以上(!!)あるというから想像を絶する。勝利を重ね続け、200位以内に入ったときにはじめて、「将来はプロテニスプレイヤーとしてやっていけるのではないのか」と決意できたという。いかにテニスの世界が、厳しく、険しいかを教えてくれる。

 「練習ばかりしているから大変と思われるかもしれませんが、とにかく私はテニスが楽しくて仕方なかった(笑)。もちろん大変なんですけど、それ以上に楽しかった。テニスを優先するために入学した湘南工科大学附属高等学校体育コースでは、同じようにスポーツで道を切り拓こうとしている仲間や友だちがたくさんいたので、刺激的だったし、気持ちを理解し合えたことも大きかったと思います」

 なんでも、ハードな練習終わりに1時間だけカラオケに行って、サザンオールスターズなどを熱唱して息抜きをしていたそう。「今でも一番仲が良いのは、そのときに出会った友人たち」と笑うように、青春時代に甘苦をともにした仲間は一生の宝物だ。

 19歳で初タイトル(ダブルスで初のツアー優勝)、翌年にはシングル・ダブルスともに世界ランキング50位内に到達。ダブルスのスペシャリストとしても注目を集めるようになる。と、ここで気になるのが、そもそもダブルスってどのようにペアを組むものなのか――。「“私と組まない?”って感じで誘って、OKだったら組む感じですね」とあっけらかんと答えるけど、そんなランチに行くみたいなテンションで誘っていいものなの!?

 「シングルのランキングが高いとペアになったときに、ダブルスのランキングも高くなります。ランキングに応じて出場できる大会が変わりますから、ランキング上位の人ほどいろいろな人に声を掛けやすくなりますね。ですから、ランキングは大事。でも、誘うときは結構フランクですよ(笑)」

 順風満帆に見えたテニス人生に、初めてスランプが訪れたのは25歳のとき。「それまであまりに順調すぎたんですね。壁を何度も乗り越えてきたわけではなく、大きな挫折も知らないままプロとしてやってきたことで、どうしていいか分からなかった」。はじめてのスランプが、あまりにも大きな壁に見えたと述懐する。




本当にやりたいことが見えてくる“Wish List”



 「引退しようと思い、そのことを母に告げると、「ここで辞めても他の事がうまくいく? 自分のやるべきことを全部やりきれたのか」と聞かれて。答えはシンプルで、「やりきれてない」に決まっている。私は大きな壁から逃げ出したかっただけだと気が付きました」

 コートに戻った杉山さんの新しいコーチを務めたのは、言葉をおくった母の芙沙子さんだった。「最初はぶつかり合い。でも、灯台下暗しではないですが、近くにいる人のアドバイスの方が、自分とっては上手くいくこともあるんだなって」、そう優しく語る。母と子の二人三脚は、引退する34歳までずっと続いた。

 現在、杉山さんは4歳の息子を育てるママでもある。子どもと向き合うときは、3つのことを心がけているそう。

 「“真剣に息子と向き合うこと”。子どもから発せられるサインを逃さないように。と言っても、べったりではなく、きちんと距離感も持ちながら真剣に向き合うことが大事だと考えています。そして、“リミットをつけない”。親が勝手にこれくらいかなって決めるのではなく、子どもの姿勢を尊重する。自分目線ではなく、息子目線を忘れないようにしています。最後が、“待つ”こと。子どもの時間で待ってあげることですね。バタバタして仕事が忙しくなったりすると、自分の時間で物事を考えがちですが、子どもの時間で考え、待つようにしています」

 育てているのは我が子だけに留まらない。現在、彼女は将来のテニスプレーヤーを育てるべくテニス指導者としても精力的に活動している。

 「昨年から『Ai Sugiyama Cup』といって、ジュニアの国際大会(茅ヶ崎・11月中旬)を開催しています。国際大会としては、最も格が低いグレード5の大会ですが、ランキングのない子でも参加できる大会なんですね。これから羽ばたいていくような子どもたちが集まる! どんな子が参加して、どんな子が羽ばたいていくのか、本当にワクワクするし、そういった子どもたちの手助けになれることが幸せですね!」

 杉山さんも毎日参加するAi Sugiyama Cup は、観戦無料とのこと。未来のスーパースターがいるかもしれない。「世界と戦おうとしている子どもたちの姿を見にきてくれたら、私たちもとても嬉しいです」。現役時代、印象的だった杉山愛の笑顔は、いま、次世代の育成という大きな目標に向かって、再びキラキラと輝きだしている。

 「現役を引退してから、様々なメディアに出演させていただくなど充実した日々を過ごさせていただきました。その一方、テニスのときのような明確な目標を定めることができず、自分がどこに向かっているのか、心の持ち方のバランスが悪くてモヤモヤしていました。それで、引退後に“Wish List”を作ったんですよ」

 自分が何をやりたいか、を書き出してみる。仕事だったり、勉強だったり、プライベートだったり、大きなことから小さなことまで。そこから自然に未来が見えてくると微笑む。

 「指導者になりたい気持ちは、引退直後からありました。でも、すぐに指導者を目指したら、のめり込む性格の私はそれしかできないだろうなって。当時は、まだ結婚もしていませんでしたから、プライベートだって充実させたかった(笑)。書き出した Wish Listは、徐々に本当に自分がやりたいものが見えてくるんですね。ですから、まずは書き出してみることが大事。そうすると、自分のやりたいことや自分らしさというものが、浮かび上がってくると思います」

【番組INFO】

アクティブオーガニック「Be」presents「BeStyle」は、TBSラジオで、毎週土曜午前5時30分~6時にオンエア。radikoでも聴取可。詳しくはHPを参照。
https://www.tbsradio.jp/be/

また、当日の模様は、以下のYoutube「Be Style」チャンネルからも視聴可能。
あなたの「なりたい」が見つかるかも――。
https://www.youtube.com/channel/UCtEhEgJPGJQ9IX4y5vbmESw/featured

<<< 1 2
三代目JSBの山下健二郎とGENERATIONSの片寄涼太がブラックフライデー盛り上げ 「自分のご褒美しか買ってなかったけど……」
情報の公平性や平等をうたい願うならば、ヤンキースファンは今年、とても悲しく苦しく切なかったであろう話!〈徳井健太の菩薩目線 第224回〉
I’moonが「ELEGANT LADY」で昨シーズンの雪辱果たす! aRB、RAPTURESはSWEEPで勝利 〈Dリーグ24‐25〉
来日チャン・ドンゴン「韓流四天王という…」東京ドームで行ったイベント名に照れる
仲野太賀、撮影直前で役変更 池松壮亮が明かす
三吉彩花「私のためにケンカしないで」池松壮亮と仲野太賀、三吉を取り合い「バチバチだった」?