【徳井健太の菩薩目線】第41回 「BiSHドハマり芸人」収録時に秘めたノブさんと土田さんへの思い
欅坂46の東京ドーム公演最終日(2日目)で脳を打ち抜かれた俺は、感覚が麻痺するような足取りでテレビ朝日に向かった。『アメトーーク!』の「BiSHドハマり芸人」に出演するため 『だ。
欅坂46、そして平手友梨奈の圧倒的なパフォーマンスを目撃した後に、 BiSHについて語り尽くす2時間超えの収録。炭水化物 meets 炭水化物どころの騒ぎじゃない。アイドル摂取量過多。アイドルオーバードーズで、廃人になってもおかしくないほど、俺の頭は冴えていたんだ。
俺には、『アメトーーク!』で前科があった。
2018年4月に放送された、AKB48、乃木坂46、欅坂46、ももいろクローバーZ、それぞれが自分の応援するアイドルの魅力を伝える“芸能界アイドルファンクラブ”の回に出演した際、俺は“モノノフ”(ももクロファンの呼び名)の一人として参加した。ところが、番組進行を気にするがあまり、ももクロの魅力を最低限しか伝えることができなかった。
対して、欅坂46のファン代表として出演した土田(晃之)さんの舌鋒の鋭さと熱量はすさまじかった。欅坂の魅力を余すことなく伝える姿は、キング牧師さながらだった。「私には夢がある」(I Have a Dream)。いつそんなフレーズが飛び出してもおかしくないくらい、土田さんの熱量はすごかったんだ。それに比べて俺は、石の下で丸まっているダンゴムシ。収録中にもかかわらず、俺は自分の両手の爪を全部はぎ取ってやりたいほど悔しさに駆られていた。「もっと伝えられることがあったのに」。収録後、自らの不甲斐なさに憤慨し、そのまま六本木通りで車にはねられたいくらいだった。
そんな俺の気持ちを見透かすように、共演した千鳥のノブさんが、「もっと伝えられたのにな」と声を掛けてくれた。深夜の反省会で、ノブさんの優しさに“酔った”のは言うまでもないよね。
前科持ちの俺がやることは、一つしかなかった。清掃員(BiSHファンの呼び名)として電波をジャックし、「アイドル文化におけるBiSHという概念のすごさ」を全国民に知らしめるだけ。しかも、「BiSHドハマり芸人」の収録メンバーの中には、ノブさんがいた。ゲストとして土田さんもいた。僥倖。欅坂46の魅力が分かるなら、きっとBiSHの素晴らしさも分かってくれるに違いない。
これ以上ない復讐の舞台――復讐するは我にあり。テレビという最大公約数が求められる装置の中で、この日に限って俺は、ノブさんと土田さんという最小公約数のためだけに仕事ができればいいって、腹をくくっていた。そんなことできるのかって? 大丈夫。「俺はさっきまで平手友理奈を見ていたんだ」。そう言い聞かせて収録に臨んだよね。
結果は、ご覧の通り。おかげさまで、大した笑いは取っていない。でも、俺は何一つ後悔していない。だって、 BiSHという概念を思う存分、語れたんだから。
途中、土田さんのことを「先生」と言ってしまったことも、先のリベンジからわき出る思いからだった。天津飯が桃白白(タオパイパイ)を殺しにいくようなものさ。大悟さんに、「なげぇな」と言われたことも、俺にとっては“本懐を遂げた”以外の何物でもなかったんだ。誰の目も気にせずに、BiSHの素晴らしさをそれなりに伝えられたと思っているから。
お笑い芸人としては失格だったかもしれない。ただ、欅坂46の東京ドーム公演を見た人間としては、正しい選択ができたはずだと思いたい。そう思いたいよね。たまには自分の勝手でやってもいいと思う。ルールを気にせずに、好きなことを好きなようにやりたいもの。
収録が終わると、「BiSHドハマり芸人」の面子と飲みに行った。今回の酒は、美味かったなぁ。「もっと笑いを取れたのに」なんてことは思わず、ただただ、思いを伝えられたことに安堵し、痛飲できた。もちろん、もっと伝えられることがあったと、それぞれが反省する。でも、BiSのことにも触れることができた。ありがとう、BiSH。ありがとう、清掃員たちよ。
その中で、初めてアインシュタインの稲田(直樹)と飲んだんだ。“スマートな男”だと方々から聞いていたけど、こんなヒーローみたいな気持ちの良い奴がいるんだって、驚いた。なぜ、彼が皆から好かれるのか分かったよね。彼は、多忙を極めているノブさんに向かって、こう言ったんだ。
「ノブさんって、いま、楽しいんですか?」。
話の続きは、次回にしようか。
欅坂46、そして平手友梨奈の圧倒的なパフォーマンスを目撃した後に、 BiSHについて語り尽くす2時間超えの収録。炭水化物 meets 炭水化物どころの騒ぎじゃない。アイドル摂取量過多。アイドルオーバードーズで、廃人になってもおかしくないほど、俺の頭は冴えていたんだ。
俺には、『アメトーーク!』で前科があった。
2018年4月に放送された、AKB48、乃木坂46、欅坂46、ももいろクローバーZ、それぞれが自分の応援するアイドルの魅力を伝える“芸能界アイドルファンクラブ”の回に出演した際、俺は“モノノフ”(ももクロファンの呼び名)の一人として参加した。ところが、番組進行を気にするがあまり、ももクロの魅力を最低限しか伝えることができなかった。
対して、欅坂46のファン代表として出演した土田(晃之)さんの舌鋒の鋭さと熱量はすさまじかった。欅坂の魅力を余すことなく伝える姿は、キング牧師さながらだった。「私には夢がある」(I Have a Dream)。いつそんなフレーズが飛び出してもおかしくないくらい、土田さんの熱量はすごかったんだ。それに比べて俺は、石の下で丸まっているダンゴムシ。収録中にもかかわらず、俺は自分の両手の爪を全部はぎ取ってやりたいほど悔しさに駆られていた。「もっと伝えられることがあったのに」。収録後、自らの不甲斐なさに憤慨し、そのまま六本木通りで車にはねられたいくらいだった。
そんな俺の気持ちを見透かすように、共演した千鳥のノブさんが、「もっと伝えられたのにな」と声を掛けてくれた。深夜の反省会で、ノブさんの優しさに“酔った”のは言うまでもないよね。
前科持ちの俺がやることは、一つしかなかった。清掃員(BiSHファンの呼び名)として電波をジャックし、「アイドル文化におけるBiSHという概念のすごさ」を全国民に知らしめるだけ。しかも、「BiSHドハマり芸人」の収録メンバーの中には、ノブさんがいた。ゲストとして土田さんもいた。僥倖。欅坂46の魅力が分かるなら、きっとBiSHの素晴らしさも分かってくれるに違いない。
前回のような思いは絶対にしたくない
これ以上ない復讐の舞台――復讐するは我にあり。テレビという最大公約数が求められる装置の中で、この日に限って俺は、ノブさんと土田さんという最小公約数のためだけに仕事ができればいいって、腹をくくっていた。そんなことできるのかって? 大丈夫。「俺はさっきまで平手友理奈を見ていたんだ」。そう言い聞かせて収録に臨んだよね。
結果は、ご覧の通り。おかげさまで、大した笑いは取っていない。でも、俺は何一つ後悔していない。だって、 BiSHという概念を思う存分、語れたんだから。
途中、土田さんのことを「先生」と言ってしまったことも、先のリベンジからわき出る思いからだった。天津飯が桃白白(タオパイパイ)を殺しにいくようなものさ。大悟さんに、「なげぇな」と言われたことも、俺にとっては“本懐を遂げた”以外の何物でもなかったんだ。誰の目も気にせずに、BiSHの素晴らしさをそれなりに伝えられたと思っているから。
お笑い芸人としては失格だったかもしれない。ただ、欅坂46の東京ドーム公演を見た人間としては、正しい選択ができたはずだと思いたい。そう思いたいよね。たまには自分の勝手でやってもいいと思う。ルールを気にせずに、好きなことを好きなようにやりたいもの。
収録が終わると、「BiSHドハマり芸人」の面子と飲みに行った。今回の酒は、美味かったなぁ。「もっと笑いを取れたのに」なんてことは思わず、ただただ、思いを伝えられたことに安堵し、痛飲できた。もちろん、もっと伝えられることがあったと、それぞれが反省する。でも、BiSのことにも触れることができた。ありがとう、BiSH。ありがとう、清掃員たちよ。
その中で、初めてアインシュタインの稲田(直樹)と飲んだんだ。“スマートな男”だと方々から聞いていたけど、こんなヒーローみたいな気持ちの良い奴がいるんだって、驚いた。なぜ、彼が皆から好かれるのか分かったよね。彼は、多忙を極めているノブさんに向かって、こう言ったんだ。
「ノブさんって、いま、楽しいんですか?」。
話の続きは、次回にしようか。
※【徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
◆プロフィル……とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。