マネの名画になりきって…上野で美術家・森村泰昌のワークショップ開催

撮影を終えてホッとした表情の鶴田さん
 撮影を終えた都内在住の鶴田寛子さんは、友人から教えてもらい今回のワークショップに応募した。この日に向けての準備は「(肌を整えるのに)パックとか、気をつけていました。2日前からニキビができちゃってあんまり意味なかったんですけど(笑)」と笑う。2カット目の2人の距離について「本当にもうすぐキスしそうな、頬がついちゃうかなくらい近かったけど、写真になるとそこまでの距離を感じなかった。そう考えると『この絵はなんなんだろう』とすごく不思議」と首をひねった。

「ここに立って(カメラマンから)指示された時に、うつろだったりムッとしてるような、微笑んでも見える表情というのは、この少女の時代や年齢での不安やいろんな感情があっての表情なのかなと感じた」といい、今回の変身体験を「絵の中の人物になってみると、作品や作者、その時代などに興味や気がつくことが深まる。いまの気持ちとしてはもっとこの時代の絵を見たい、知りたいなと純粋に思っています」とうれしそうに語った。

 森村は「美術館の娘(劇場A、劇場B)」制作当時には実現できなかった、背後の鏡に映るカウンターを立体にするなどの構想を、今回の舞台装置にすべて盛り込んだという。
「マネの絵は鏡なのにあたかも現実世界があるかのような、鏡なのか現実なのか分からない工夫が凝らされている」と森村。新しく立体にした舞台装置は、およそ1カ月ほどで一気に制作した。通常は1人ですべての登場人物を演じる森村は「(相手の)存在感というのは今回初めてで、もう体がくっついてたんですよ(笑)。本当はカウンター越しだからおかしいんですけどそうなったし、話をしているから目が合っているはずなのに全然違う方向を向かないとああいう角度にならない」と構図の不思議さに言及。