5%還元に躍起になる“キャッシュレスセレンディピティ男”と遭遇したある女性のお話
先述した「驚くほど使えない」という悪評の正体。それは、あまりにキャッシュレスマップに誤情報が多かったことだ。ユーザーインターフェースが使いづらいことに加え、その店舗で使用できないキャッシュレス決済も記載されていることが多発していたため、経産省もろともやり玉に挙げられるほど、大不評となる事態に陥ってしまったのである(※現在は改善傾向にある)。
「その後、彼は、“じゃあ、もうちょっと探してみます”ってさわやかに入店を断って、違う店を探し始めました。私も恥ずかしかったから、そのお店で食べることに躊躇していたので、ちょっと助かりましたけど…。さすがに勘弁してほしいと思ったので、“普通に探しません?”って伝えたら、“セレンディピティ! セレンディピティ!”って笑うんです。頭がオカシイのかなって思いました(苦笑)」
怪奇、 キャッシュレスセレンディピティ男、現る――。
セレンディピティ。広辞苑には、「思わぬものを偶然に発見する能力、幸運を招き寄せる力」と書かれているが、今のところ不運しか引き寄せていない。よって、彼の行動はセレンディピティでもなんでもない――はずなのだが、なぜか彼は楽しそうにしていたという。怖い。
「多分、ゲーム感覚なんでしょうね。一人でやってくれって話ですよね。自分の知らないお店を、キャッシュレスをきっかけに知ることは良いことだと思います。でも、よりによって初めてのデートで、“それやる?”って」
結局、どんなお店を選んだのか尋ねてみると。
「歩き回るのがバカバカしかったから、その次に行ったお店にしました。普通にクレジットカードが使える創作系のオシャレな居酒屋です。食事はおいしかったですし、それなりに楽しい時間でした。会計は、彼がクレジットカードで支払い、私は2000円だけお渡しする形。さっきの行動を見ていなければ、楽しい時間だったと思うんですけど、あの一連の行動を見ていると、“5%還元できて満足だった?”としか思えない、ははは。LINEPayが使えたら、私にスマホ経由で送金させるつもりだったのかも」
A子さんは、「キャッシュレスは便利だけど人に強要するものじゃないんだなって思いました」と、この経験を踏まえて痛感したと話す。
「彼の行動って、キャッシュレスのメリットを満喫するという意味では、ある程度理解できるんですけど、“そう思わない? え? なんで!?”的な雰囲気、“キャッシュレス使いこなしている俺スゲー感”がすごいキツかったです(笑)。そもそも、マップでミスってるんだから使いこなせてねーだろ!って。行動のすべてをキャッシュレス化させるのは勝手だけど、他者に押し付けたり、無理に共有させたりしないでほしい。キャッシュレスって言っても、個人差があるんだから」
恐縮ですけど、その後、セレンディピティ男とは……。
「会うわけないじゃないですか! あっちも私のことをハズレって思っているんじゃないですか? “キャッシュレスの面白さを理解できない人とは無理”みたいに思ってそうだし。まぁ、私から言えるのは、得したいだけなのに“セレンディピティ”とか言い出したら、ホントに要注意ってことですね」