川﨑真一朗「みんなが自分を応援してくれていることに胸を張れるようなファイターになりたい。」


 大学卒業後はサラリーマンをやっていたそうですが、どのようにして今に至ったのでしょうか。

「繊維業界の会社で丸3年働いて、ハードでしたけど仕事は好きでした。大学時代からの縁で22歳からキックボクシングをやりはじめたのですが、会社員時代は残業して家に帰ってそれから練習という生活で、会社を辞めようという気持ちに完全に切り替わったのは退職する2~3カ月前のこと。“これは違う”と。めちゃくちゃに聞こえるかもしれませんが、フィジカルな意味で“落ちていく自分を見たくない”っていうのがあったんです。サラリーマンをやっていると練習計画を立てても練習にならず、そもそも残業で練習に行けないかもしれない、さらに業務によって2~3カ月間は練習をできない時期があったり、そういうことが続いていく中で“このままでいいのか?いや辞めよう”と。“自分だったらもっとできる”という感じがありました」

“普通“を望むご家族にとってはショックだったのでは?

「今はもう修復したのですが、仕事を辞める頃には喋らなくなっていて1年半ほど親子の縁を切ったような感じでした。紆余曲折ありながらも大学まで出て一部上場の企業に就職したのに、何故わざわざ道をそれるような、しかも起業などの明確な目標のためではなく、僕の場合は“格闘技”をやると言う。もともと格闘技に対して良い印象のない家庭で怪我もつきものの世界で“まさかうちの子がそんなことやって大成するわけがない”と、まあ当然思いますよね。それを押し切ってしまったことは、悪かったと思っています。家族に相談できる環境にあるのにそうしなかったことへの、後ろめたさと言うのでしょうか……意固地になってしまった。もしきちんと話し合ったら格闘技はやってなかったかもしれないですよね。ですから納得してもらうためにも、結果を出さなくてはいけません。今はアルバイト生活になって、たまに通勤電車で普通の生活を羨ましく思ったりネガティブになることもあります。でも強くなるためならお金はもういいとか、結局どうなりたいかと言う時に自分が選ぶ答えは決まっているんですけどね」

 そんな川﨑選手が大切にしていることや信条は?

「格言など好きなものはありまして、いくつか座右の銘をチョイスすると、“青は藍より出でて藍より青し” “勝って驕るな、負けて腐らず” “男は振り向くな すべては今”。この3つが常に頭の中、心の中をまわっています。師匠を越えて、師匠が味わっていない景色を見せたいということがまずあり、勝って驕るな、というのは自分を応援してくれている人を、がっかりさせたくないという気持ちが大きいですね」

 ストイックに格闘技に打ち込んでいる中でオフはどうしているのですか?

「僕の休日はほんまにしょうもない(笑)。適当に散歩したり、カフェに行ったり、岩盤浴も。小さい頃から格闘技をやっていたら余裕もあるでしょうけど、20代から始めたキャリアを埋めようとしたら、10年以上遅れをとっているので、子どもの頃からやっている人の倍くらい練習しないと、ついていけません。だからこそ日々の練習で疲れ果てて、週末はコーヒーを飲んでゆっくりしています。唯一の癒しとしてコーヒーブレイクさえあればいい」

 では、最後に、2020年の目標をお願いします。

「全勝・全KOです!」

(TOKYO HEADLINE・本吉英人)
格闘家イケメンファイル Vol.106
川﨑真一朗(かわさきしんいちろう)

1991年12月19日生まれの28歳。大阪府出身。大阪の名門・月心会所属。K-1グループには2017年10月の「KHAOS.4」で初参戦。その時は“バズーカ”巧樹に、第2戦となった「Krush.87」では鈴木勇人(現Krushスーパー・ライト級王者)に敗れ2連敗を喫するも強力なパンチでインパクトを残し、2018年8月のKrush名古屋大会で3度目のチャンスを与えられる。ここで泰斗にKO勝利してから3連勝。昨年8月の篠原悠人戦では敗れはしたものの最初にダウンを奪うなど、あと一歩のところまで篠原を追い込み、ライト級トップ戦線の実力者であることを証明した。twitter:@1zkawa
<<< 1 2 3