【インタビュー】ノゾエ征爾「自分の青春の原点というか衝動の原点に立ち返ったような作品」

(撮影・蔦野裕)

「演劇にどんどん夢中になっている」


 そういった外部の大規模な公演やプロデュース公演もある中で、はえぎわの作品は特別なもの。やはりここでしかできないものという意識?
「作り方自体もそうですし。稽古を進めながら本を同時に進めることができる唯一の場所ではあります。プロデュース公演などでは脚本は早く完成させなければいけないし、ちゃんと準備されたうえで行われるべきというのはもちろん分かりますが、そこばかりに頭でっかちになりすぎてもとは思います。そこと面白いものというのはイコールとも言い切れない。というか、準備期間が十分ではない企画が多い。“スピード感”と“良いもの”。なかなかうまくいかないです」

 今回、番外公演というのは?
「最初から番外にしようと思っていました。ずっと必ずみんなを出す、ちゃんとみんなのことを書くということをやって来ていて、前回が20周年公演だったんですが、その後どうしていくかとなったときに、単純にリフレッシュしたかったというところがありました」

 今年ははえぎわ名義ではこの1本のみ。来年以降はもちろん本公演も?
「どこかで通常のはえぎわのメンバーによる本公演ももちろんやるでしょうね。今回初めて、はえぎわのメンバーが半分くらいでやってみたんですが、新鮮な部分もあるし、同時に11人で成立している部分ってたくさんあったんだなということも知りました。なんか分からないけど、誰かがどこかのバランスを取ってやっている部分はあったんだなっていうことを改めて感じたりしています。そういった意味でもいい経験にはなっています」

 外部の人が入って、バランスが崩れるのは逆に新鮮?
「だいぶ新鮮です。この光景は初めて!みたいなのが結構あります。今回参加しているメンバーもそれぞれどう感じているかは分からないですが、出ていない劇団員のことが恋しくなったりしているところもあります。僕自身が離れてみてありがたさを知るじゃないですけど、そういうことは感じてますね」

 20年も劇団を続けるのは大変だったのでは?
「小劇場は大変ですよね。うちは専属の制作さんもいなくて、その都度お願いしていますし、メンバーも昔みたいに、これにすべてを注げるような生活環境ではないでしょうし。それは僕もですけど。そうすると一からまた助成金の申請をしてとか、なかなか地味な作業がボディーブローのように結構効いてきたりします。なので今回はニッポン放送さんから機会をいただけたのはありがたかった」

 20年前は上の世代を突き上げる立場。今は若い世代に突き上げられる感覚はある?
「根本宗子さんとかナカゴーの鎌田君とか、活躍が気になる人はたくさんいます。でもまたちょっと種類が違うなって気はするし。僕自身がまだまだ自分の創作で精一杯なので、あまり気にしていられないという(笑)。ただ見方は以前より広がっている気はします。演劇界で自分はどれくらいの作品を作れていますか?っていうのは。昨年の池袋での野外公演でも、普通に無難にポンとやるのではなくて、なんかちょっと話題になることをしようと思って、大人数というのはそういうところもありましたね」

 そういう演劇ファン以外の人を劇場に呼び込むために意識することは大事。
「ジャンルを問わずにマルチにやっていくというのは、これからは常識になっていくんじゃないですかね」

 かつてはノゾエ自身がそういったマルチな活動をしていく人のように思えたが、年を取るにしたがって演劇に没頭している感じ。
「どんどん夢中になっているかもしれない(笑)。なんでですかね。取りつかれているんですかね。全然やれた感もない」

 岸田戯曲賞も受賞しているし、大きな作品も手掛けている。世間的には十分高い評価は得ているようにも思えるが…。
「そんなこと感じたことないですし、永遠に達成はできないと思います(笑)。ただただ面白いものを作っていきたいという思いだけですね」

 同作は2月28日から3月10日まで東京・有楽町のニッポン放送 イマジン・スタジオで上演される。
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