AIと人間が融合した「TEZUKA2020」新作漫画『ぱいどん』お披露目。まさかの連載も視野に
この日公開された扉絵と導入の1~3ページ(©「TEZUKA2020」プロジェクト)
ストーリーとキャラクターを別々のAIで生成
制作にあたってはストーリーとキャラクターを別々のAIで生成。
漫画の顔は機械にとってはただの線でしかないことからキャラクター生成は難航。最初に生成されたキャラクターは手塚作品とはほど遠いもの。トラウマになるような奇怪なキャラクターが生み出されもした。しかし手塚漫画のキャラクターを学習させなければという発想を転換し、世界中の人間の顔写真データを学習済みのAIから「転移学習」するという手法を用いたことで、キャラクター生成は一気に進み、1000個を超えるキャラクターが生み出された。
ストーリーについては今回AIの監修を行った慶応大学の栗原聡教授の「栗原研究室」が開発していたシステムを用い、シナリオ作成に必要なパーツなどを生成。これをもとにAIがプロットを生成。ここで129のプロットが出来上がった。
手塚氏は生涯で700以上の作品を残しているのだが、年代、読者ターゲットなどによって幅広い特性の作品となっていることから、「すべてをデータ化してしまうとまとまらないだろうという懸念があったので、作品を絞り込んだ。『ブラックジャック』、『三つ目がとおる』の連載を行っていた1970年代の作品群を中心にデータ化した」(眞氏)という。
このキャラクターとプロットが出来上がってからは人間にバトンタッチされ、クリエイターがキャラクターデザインを起こし、ストーリーパートで仕上がったシナリオを合わせ、ネームを起こしてペン入れという通常の漫画を制作する作業に入り、作品が完成した。
“ぱいどん”がホームレスという設定については眞氏は「主人公の設定が日比谷にいて哲学者で役者で、テーマがギリシャ。どういうことだろう?と考えた時に、もしかして浮浪者のような人なのでは?と思った」、名前については「古代ギリシャがテーマだったので、そちらから名前を持ってこようと思った。ソクラテス、プラトンという有名な方がおられるが、プラトンの著作にソクラテスの仲間の1人だったパイドンという哲学者が登場人物の『パイドン』という著作があり、“この名前は面白いのでは?”と思った」という。
1000個を超えるキャラクターの中から選ばれたのが「№81」というキャラクター。このキャラクターを選んだことについては「惹かれるものがあった。それはちょっと潤いを帯びた陰のある感じの目つき。(髪に隠れて)片眼が見えないのが興味を惹かれた。隠していることがありそうな、秘密がありそうな顔。秘密を持った主人公というのは面白いのではと思った。手塚治虫的な雰囲気が出ている。でもこんなキャラクターは見たことがない。もしかしたら手塚治虫が新しく生み出すとしたらこんな顔かもしれないと思わされた」などと語った。