3月12日は「世界腎臓デー」慢性腎臓病(CKD)対策の重要性
東京慈恵医科大学腎臓・高血圧内科教授の福井亮先生
続いて東京慈恵医科大学腎臓・高血圧内科教授の福井亮先生は、CKD対策の重要性について「CKD対策は国家的なプロジェクトで、成功がもたらすインパクトは極めて大きい」として2018年にまとめた『腎疾患対策検討会報告書』の内容を紹介。「私なりに要点を挙げますと、腎臓は修復はされますが再生はされないので早期に介入、つまり治療しないといけない。それには腎臓内科医や腎臓病療養指導士による早期の介入の徹底が重要です。そして、腎疾患対策を実践するのはさまざまな人がいるので、対象者を明確にしたより効果的で効率的な普及啓発。また、腎疾患対策にはさまざまな好事例が出ているのに、それを横展開していないのは問題です。行政と連携することによる横展開も重要」と語る。
福井先生は早期介入の手段として、かかりつけ医から腎臓専門医や専門医療機関に紹介する基準をまとめた表を作成し、これを「かかりつけ医だけではなくCKDを扱う医療者の皆さん、健診施設や産業医、他科の専門医、メディカルスタッフなどに周知すること」と説明。CKDの定義を抜き出したポスターの作成や30〜40代向けの媒体にCKDに関する取材記事を掲載、行政への普及啓発も積極的に行っていることを報告した。
最後に「透析導入患者が減ると、CKDの原疾患である糖尿病や高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症、難病などの診療水準の向上を意味します。そうするとCKD患者の減少のみならず、脳血管疾患や心疾患患者も減少するので健康寿命の延伸に大きく貢献。CKDというのは世界的にも大きな問題となっており、最も高齢化が進んだ国である日本が世界で初めてCKDを克服すれば世界へのアピールにもなる」と期待を込めた。
末期的な状態にならないと自覚症状が現れないことから「沈黙の臓器」とも呼ばれる腎臓。手遅れになる前に改めて慢性腎臓病(CKD)についての知見を深めてはいかがだろうか。