【インタビュー】市原隼人「目の前にいるお客様に最高の楽しさを直接届けたい」
――まもなく舞台が上演となりますが、今のお気持ちをお聞かせください。
すごく楽しみです。ちょうど今からセットを組んだ状態で通し稽古を行うのですが、本作では恋をしている女性が生きる現実の世界と、その彼女の脳内の様子を同時に見せているんですね。2つの世界を同じ空間の中で展開していくのって映像では難しいし、舞台だからこそ成立する見せ方だと感じています。観に来てくださるお客様も今まで味わったことのない楽しさを体感できる舞台になると思うので、自分でもワクワクしています。
――さらにそこにお客様が入ると俳優さんから出る熱量も一気に変わってきますよね。
はい、もちろん。「見てくれている人がいる!」と感じるとこっちにもいろんなものが乗っかってくるんですよ(笑)。今の段階ではコメディ色を前面に出した演出にしているんですが、お客様の反応次第ではもう少し笑いの要素をそぎ落とそうかなとも考えています。本当はコメディだからたくさん笑っていただきたいけど、やりすぎるとこっちの押しつけになってしまうし…。だからそのさじ加減は、お客様との駆け引きみたいなものだと思っています。
――舞台はお客様が一緒にいて成り立つエンターテイメントだと。
もうどう考えても100%そうですよね。おっしゃたように目の前にいるお客様と一緒に作り上げていくのが舞台であり、その瞬間を全力で味わえるのが役者の醍醐味。そもそも何のために役者が存在するのかといったら、それはお客様に楽しんでもらうためだからです。そんなふうに役者として生きる意味も学ばせてもらえる場所であることも、僕が舞台を愛する理由の1つ。個人的に演劇は日常の中でもっと当たり前に楽しめるカルチャーになってほしい。20代前半の頃に突然、「ブロードウェイ・ミュージカルが観たい!」と思い立ち、その3日後にニューヨークで観た舞台の感動が今でも忘れられないんです。僕にとってそれは夢みたいな時間だったのに、周りに座っている人は生活の一部のような感覚だったらしくて。でもそんな日常って素敵だなと思うし、自分も舞台に立って誰かを喜ばせたいという気持ちになりました。