暗中模索だった押切もえが 樹木希林から伝えられた “肩が軽くなった一言”とは



 そういった葛藤が、モデルの世界に限らず、女性が夢を追うさまざまな場所に存在しているのではないか――。第二作であり、第29回山本周五郎賞候補にもなった連作短篇集『永遠とは違う一日』では、モデルに振り回されるマネージャー、アイドルとして挫折する高校生など、異なる境遇に置かれた女性たちの姿を綴った。

「身近な題材だけではなく、興味のある方々へ取材をしたい気持ちが生まれました。作中で助産師にまつわる話が出てくるため、事前に助産院への取材も行いました。自分で電話をかけて、「取材をさせていただけませんか」と。話を聞かせていただく中で、「この人と会えてよかった」、「この人の思いを書きたい」って思えるようになったんですね。取材を通じて、どんどん言葉が紡げるようになっていく感覚です。自分も頑張らないといけないなって、より思えるようになりました」

 もう一つ、押切さんにとって背中を押す出来事があった。「小説を書き始めた30代の半ばぐらいに樹木希林さんにお会いする機会がありました」。樹木さんの一言で、肩が軽くなったと述懐する。

「当時の私は結婚もしていなくて、もっと言えばすごいこじらせていた(苦笑)。プライベートもモヤモヤしていたし、小説も書き始めたはいいものの自分はどこを目指してるんだろうって釈然としなかったんですね。そんなときに、樹木さんから、『結果を目指すのは素晴らしいことだけど、その過程を味わって』と言われました。 ゴールに向かって進む姿は、どんな人でも美しい。けれども失敗してもいいから、その過程を味わったり面白がったりすることを忘れてはいけない……それってとても素敵ですよね。樹木さんのような大成されている方から、内容を楽しみなさいとアドバイスをいただけたのは、本当にありがたかったです」

 結果はどうであれ、内容を楽しむ気持ちを持つこと。2015年、絵画作品「咲くヨウニ」が二科展に入選。今年、1月にはYouTubeチャンネル「Moe Oshikiri./押切もえ」を開設。新しいことに次々と挑戦する姿は、まさに“過程を味わう”という助言を体現しているかのようだ。

「モーニングルーティンを公開したり、初めての手作り味噌を披露したり、何気ないことを視聴者の皆さんと共有できたらいいなって。インスタ映えのような“盛る”ような写真や情報もいいけど、私はそれとは違うものを発信をしたかったんですよね。自分が動画を制作するにあたって、「今まで照明を当てて頂いていたんだな。照明の方はすごいんだな」なんて、改めて気が付くことも多いです(笑)」

 バイタリティあふれる原動力はどこから湧いてくるのか。毎日の暮らしの中で大切にしていることを聞くと。

「できるだけ丁寧に暮らすこと。そして、ポジティブでいること。《人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ》というチャップリンの言葉があります。近くで見てしまうとネガティブに思えることも、ちょっと引いて見ると笑えたりすることもある。そういった気持ちを忘れないようにしています」

アクティブオーガニック「Be」presents「BeStyle」は、TBSラジオで、毎週土曜午前5時30分~6時にオンエア。radikoでも聴取可。詳しくはHPを参照。
https://www.tbsradio.jp/be/

また、当日の模様は、以下のYoutube「Be Style」チャンネルからも視聴可能。
あなたの「なりたい」が見つかるかも――。
https://www.youtube.com/channel/UCtEhEgJPGJQ9IX4y5vbmESw/featured

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