水源から蛇口まで。日本最大級の水道トータルサービスが4月誕生【東京水道株式会社 野田数社長】


 このタイミングでの設立にはどのような意味合いがありますか?

「そもそも水道法が改正された背景は、各自治体が、単独では水道事業を維持できなくなっていることからなんですね。水道施設の老朽化によって、施設更新のタイミングに来ていても、財政状況が厳しく、更新できない。こうした状況から、官民連携で合理化して水道事業を維持するというのが目的です。もうひとつは、水道事業に携わる技術者の不足や人材確保の問題があります。特に、東京都水道局の管轄エリアは、23区や多摩地域含め、東京全域です。1300万人の都民の水を支えるために、新会社で合理化を進めて、東京の水道を安定的に供給していくということが求められます」

 野田さんは昨年、東京水道株式会社の前身となる東京水道サービス株式会社の社長になられましたが、どのようなことに努められましたか?

「大きなミッションは、統合準備と社内のガバナンス強化です。統合にあたっては、それぞれの会社で文化が違うので、今後も社内の言語を一体化する必要があります。また、採用難への対策です。東京都水道局の業務が弊社に移管されるにあたり、業務量の増加に備えて、若手技術者を多く確保しなくてはいけませんでした。当初は、理系の学生が減っているという背景もあって、採用数は右肩下がり。非常に厳しい現実に直面していました。こうした課題に対して、東京水道サービス(株)では氷河期採用や中途採用の通年採用などを行い、採用数を60%ほど増やすことができました。また、社のブランディング強化に取り組みメディア掲載は前年比の10倍以上になりました。待遇の改善などで社員のモチベーション維持に取り組んでいます」

 新会社設立によって、都民生活はどのように変わりますか?

「お客さまの問い合わせ窓口と、事故対応などを担当する技術部門が一体の会社になることで、お客さまへのサービスは向上すると考えます。また、一体となることは、災害対応においても重要です。昨年の台風19号では、奥多摩町と日の出町で道路が崩落しまして、断水地域が発生しました。その断水エリアへの給水作業を東京都水道局からの要請で支援したのが当社です。道路が崩落したエリアの先の地域に水を届けるために、ポリタンクを一世帯に2つずつ運んで、全戸へ配布したり、復旧作業にあたりました。大きな災害の時に最前線で応急給水や応急復旧に当たるのが私たちTokyo Waterです。災害対応の人数が足りないときには、当社も応援に行けるなど、今後このように一体となって、よりスムーズな災害復興が可能になります」