行定勲監督 映画『劇場』恋をしたことがあるすべての人、かつて夢を追いかけたすべての人へ

行定勲監督(撮影・蔦野裕)
 自身の生きる世界だからこそ、行定監督自身、入魂の一作となった本作。大胆な演出にもそのこだわりが表れた。映画化作品において原作に忠実なスタイルを貫く行定監督だが、今回は映画オリジナルで表現したいものがあったからだ。

行定「僕は基本的に原作・作家に対する原理主義的なところがあって、なるべくそこを逸脱しないスタイルです。だけど、今回あるシーンをオリジナルで描いています。原作に惚れこんだうえで、読み終わった時点で、映画化するとしたら、ここはこうしたほうがより原作の意味合いが伝わるんじゃないかと、最初に浮かんだんです。ただの悲恋だけではない、未来につながっていくようなもの。それが感じられたので、『劇場』というタイトルにふさわしいものが、この映画でお返しできるんじゃないのかな、と。そのことを又吉さんに伝えたら、非常にニュートラルに受け止めて、“楽しみにしています”とおっしゃってくれて、ほっとしました」