出版界の6次産業! 誌面の内容を体験化する シニア女性誌「ハルメク」、飛躍の理由
取材をただの取材で終わらせない
「先述したシンクタンクに加え、読者モニター組織の「ハルトモ」の存在も大きいです。社交的でアクティブな読者の方にご協力いただき、座談会のような形で通販商品開発に協力していただいています」
誌面を入り口に、ユーザーエクスペリエンス(UX)を実現したハルメクが、飛ぶ鳥を落とす勢いで、部数を伸ばしたのも納得。31万部の売上を誇る同誌だが、その多くが“3年以上の購読者”。「購読終了前後に、読者ご自身で継続か否かの判断をしてもらうようにしています」。基本的には自動更新という選択を取らずに、気に入った場合は再度申し込んでくださいという誠実な姿勢も、読者との信頼関係を構築していると言えそうだ。
多岐に展開するハルメクの取り組みだが、編集部がイベントを手掛けるとなると誌面の内容がおろそかになりそうだし、かといってイベント会社など外部に受注すると衝突が起きそうなもの。一体、どう展開しているのか?
「私が着任する以前から、イベントを手がける事業や、通販の事業はありました。ところが、雑誌は雑誌で、イベントはイベントで、という具合に、それぞれの部署が独立して行うことが通例になっていました。私としては、それらを連動して展開することができたら、「主婦と生活社」時代に培ったことをアップデートできるのではないかと思ったんですね」
取材先でハルメクがコラボできそうなものがあれば、積極的に声をかけるなどして広げていったと話す。
「例えば、編集者が旅行系の取材の中で、漆工房に嫁いだ素敵なシニア女性にインタビューをする機会がありました。その工房に魅せられた編集者は、イベントを手掛ける文化事業部に相談して、普段は非公開の漆工房の中に入って漆器体験を開催するというイベントを実現するにいたりました」