「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜に入港。なぜあのような対応になったのか…【ニュースで見る新型コロナウイルス】
日本では1月16日に最初の感染者が確認された新型コロナウイルス。2月になると一気に感染が拡大。なかでも2月3日にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜に入港後、日本国内は一気に緊張が高まった。今回は2月上旬の新型コロナウイルスに関するニュースを追う。
横浜港に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」(写真:AP/アフロ)
◆2月1日 使い捨てマスクの価格が高騰
日本政府が2月7日の施行を予定していた新型肺炎を感染症法上の「指定感染症」とする政令を前倒し。入国申請日前14日以内に武漢市など中国湖北省に滞在歴がある外国人について、感染の有無にかかわらず、入国を拒否。湖北省に滞在歴のある外国人に加え、同省発行の中国旅券を所持する外国人も特別な事情がない限り、入国を拒否することとなる。日本が特定の地域を指定して入国拒否をするのは初めて。
インターネット通販サイトの使い捨てマスクの価格が高騰し、通常は数百円の商品が10倍近くの値段で販売されるようになる。
1日までに10人の感染が確認されたオーストラリアでは豪州国民と永住者、直接の親族を除き、中国本土からの入国を禁止。湖北省からの帰国者が対象だった14日間の自宅隔離を、中国全土に広げ、中国経由の旅行客も対象とした。そして豪州市民に中国本土への渡航中止も勧告した。豪州では1日までに10人の感染が確認されている。シンガポールも1日夜から、過去14日以内に中国本土に滞在した人の入国を原則として禁止した。
中国の感染者は1日夜までに中国本土で1万1860人。うち死者は259人。
米国内では1日までに7人の感染者を確認。米アップルは中国本土の全事務所とアップルストア全店舗を9日まで閉鎖すると発表した。
香港政府が横浜からクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗って旅行をした香港の男性(80)が新型コロナウイルスに感染していたことを確認。男性は1月10日に中国広東省に数時間滞在。17日に航空機で香港から東京入りした後、20日に横浜で乗船し、鹿児島経由で25日に香港に戻った。
ラグビーのトップリーグは試合後に選手とファンがハイタッチするイベントを取りやめ。
世界バドミントン連盟(BWF)は中国海南省で25日から開催予定だったワールドツアーの陵水中国マスターズを延期すると発表した。
ジャニーズ事務所の「SixTONES」と「Snow Man」が2~3月に予定していたイベントが延期。
◆2月2日 フィリピンで中国国外での初めての死者
中国の感染者は2日夕までに中国本土で1万4449人。うち死者は304人。
フィリピンで中国人男性(44)が死亡。WHOによると、新型肺炎による中国国外での死者は初めて。
韓国の丁世均首相が「中国の危険地域からの入国を制限する」と発表。14日以内に中国湖北省を訪問したすべての外国人の入国を4日から全面的に禁止する方針を明らかに。
ニュージーランド政府が中国本土からの外国人の入国を3日から拒否すると発表。拒否の期間は最大2週間とした。また中国本土全体を渡航情報で最高レベルの「渡航禁止」とした。
◆2月3日 「ダイヤモンド・プリンセス」が夜に横浜港に到着
厚労省が感染の疑いのある人を専門的に診察する「帰国者・接触者外来」を、2月上旬をめどに設置するよう47都道府県に要請。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が夜に横浜・大黒ふ頭沖に停泊。着岸はせず、医師や看護師を含む検疫官が数十人態勢で乗船者の健康状態を確認。乗客は約2500人、乗員は約1000人。同船から下船後に発熱の症状が出た男性は船内でサウナに入ったり、レストランで食事を取ったりしていたことが分かる。
日本国内の感染者数は計20人で変わらず、そのうち無症状の感染者は4人。
中国の感染者は3日夜までに中国本土で1万7205人。うち死者は361人。新型肺炎による中国本土の死者は発生から約2カ月で、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の349人を上回る。
台湾の陳時中・衛生福利部長(厚生労働相に相当)が買い占めで不足するマスクの購入を実名制にすると発表。購入数は1人当たり1週間2枚に制限。
中国湖北省武漢からの台湾人の撤収を中国に打診していた問題で、第1陣約200人が中国東方航空のチャーター機で3日、台湾に戻ることになる。
香港では看護師ら医療関係者約2500人が中国本土との境界の完全封鎖などを求めてストライキに突入。ストに入ったのは、一部の医療関係者が参加する労働組合「病院管理局職員戦線」。香港政府は6カ所の出入境施設を閉鎖していたが、医療関係者らは①それでは全体の1割しか流入を阻止できない②香港に隣接する広東省の感染者が600人を突破している―として全施設の閉鎖や市民のマスク着用の義務化など「5大要求」の受け入れを迫った。
WHOのテドロス事務局長はWHO執行理事会で、米国が中国全土への渡航中止勧告を出したことなどについて「(中国への)渡航や貿易を不必要に妨げる措置は必要ない」と述べ「中国の対応がなければ、世界各地にもっと感染が拡大していた」と中国の新型肺炎に対する対応を称賛。
アジア・サッカー連盟が2月26日~3月8日にトルクメニスタンで開催予定だったフットサルのアジア選手権を延期すると発表。
◆2月4日 香港で初の死者
中国湖北省武漢市から政府派遣のチャーター機の第2便で帰国した千葉県在住の50代日本人女性と、武漢市から来日していた30代女性が新型コロナウイルスに感染、肺炎を発症していたことが分かる。また、湖北省から旅行で日本を訪れ、1月30日に帰国した50代男性について、帰国前に採取した検体から新型ウイルスを検出。国内での感染確認は計23人に。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で行っていた乗客乗員約3700人への検疫作業は4日夜まで続き、発熱の症状がある人などへのウイルス検査の結果が判明するまで、全員が船内で待機した。ウイルス検査については乗客乗員全員の検査は見送り、発熱などの症状がある人とその濃厚接触者に限定し、ウイルス検査を実施した。香港の男性の濃厚接触者も判明次第行うが、それ以外の無症状の人は検査を行わないことについて厚労省は「このタイミングでの検査は不要」と説明し、帰宅後に体調が悪化したら自己申告を要請するにとどめた。
安倍晋三首相は衆院予算委員会で、緊急事態条項新設に関する憲法改正議論について「国民の命と健康、平和な暮らしを守るために何が必要かということは、憲法との関係性があるかないか関わりなく検討していくべきだ」と述べる。
政府は武漢市から帰国した邦人が経過観察のため宿泊施設に滞在する期間について、それまでの14日間から10日間に短縮すると発表。WHOが最新の知見で、ウイルスの潜伏期間を「10日間程度」としたことを考慮したもの。滞在最終日に検査を行い、陰性ならば退去することになった。
北海道の冬の風物詩「さっぽろ雪まつり」が開幕。中国が海外への団体旅行を停止したことなどから、市は3月末までの宿泊解約数を延べ13万3000人分と推計。経済損失を64億円と試算。
中国の感染者は4日夜までに中国本土で2万438人。うち死者は425人。
香港では新型コロナウイルスによる肺炎を発症していた香港の男性(39)が4日、死亡した。香港では初の死者で、中国本土以外ではフィリピンに続いて2人目。
英外務省が中国本土に残っている英国民に退避勧告。
タイで日本から帰国したタイ人男女2人の感染が確認される。この日、2人を含めて新たに6人の感染が分かり、タイ国内での感染者は計25人に。
マカオの賀一誠行政長官がカジノ企業で感染者が確認されたことから感染拡大を防ぐため、全てのカジノの営業を半月間停止すると発表。マカオではこれまでに10人が感染。
台湾の外交部(外務省に相当)が感染拡大防止策として7日以降、中国本土(香港・マカオ除く)を14日以内に訪れた全ての「外国人」の入域を拒否。
香港の看護師や医師らが新型コロナウイルスの感染者の流入を防ぐため、中国本土との境界の完全封鎖を求めてストライキを続行。参加者は前日の約2700人から約4400人に増え、医療現場が混乱。
水球のアジア選手権(12~16日、カザフスタン・ヌルスルタン)が中止に。
◆2月5日 ダイヤモンド・プリンセスで国内初の集団感染を確認
「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船者から50~80代の男女10人が感染していたことが分かる。うち日本国籍は50代女性、60代女性、60代男性の3人。10人のうち2人は香港の男性との濃厚接触者。国内で集団感染が確認されたのは初めて。神奈川県内の医療機関に搬送され、感染症法に基づき措置入院。感染者以外の人は潜伏期間や感染拡大防止を考慮し、5日から最大14日間、船内にとどまることになる。
日本国内では武漢市から来日し、4日に感染確認された30代女性の夫である40代男性の感染が新たに判明。中国からの観光客を接客した京都府在住の20代男性の感染も確認される。クルーズ船の感染者と合わせ、国内での感染確認は計35人となる。
中国の感染者は5日までに中国本土で2万4324人、死者は490人。
台湾が中国本土(香港・マカオを除く)住民の入域を、6日から拒否。
香港では林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は8日以降、中国本土から香港に入境する香港市民を含む全ての人を対象に、2週間の検疫措置を強制的に行うと発表。一方、中国本土との境界の完全封鎖を要求する医療関係者の労働組合は、5日もストライキを続行し、7000人以上が参加。5日入港したクルーズ船(乗客・乗員約3600人)で少なくとも3人に発熱症状が出ており、香港当局が乗客、乗員を船内にとどめ、検疫作業を進めた。
外食チェーンのワタミは中国本土で展開している居酒屋「和民」の直営店全店の撤退を決める。新型コロナウイルスの感染拡大で、店舗休業の長期化を余儀なくされたことや、客数が大幅に減少したため。今春までに閉鎖するとしている。
WHOのテドロス事務局長は感染拡大に対応するために、加盟国に今後3カ月間で6億7500万ドル(約740億円)の資金支援を要求。