「ダイヤモンド・プリンセス」の日本政府の対応に海外から厳しい視線【ニュースで見る新型コロナウイルス】
日本の新型コロナウイルス問題は2月はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内の集団感染のニュースが連日報道されるようになる。プロであるはずの検疫官が感染したり、後に船内に入った神戸大の岩田健太郎教授が船内で感染防止がなされていないことを暴露するなど、お粗末な対応に国内ばかりではなく海外から厳しい視線が向けられることとなった。今回は2月中旬の新型コロナウイルスに関するニュースを追う。
正式名称は「COVID-19」となったことを発表するWHOのテドロス事務局長(写真:ロイター/アフロ)
◆2月11日 WHOが新型肺炎の感染による病状を「COVID-19」と名付ける
厚労省が武漢市からのチャーター機で帰国した邦人男性2人が、新型コロナウイルスに感染しているのを新たに確認したと発表。2人は帰国直後の検査で陰性だったが、その後発症し、再検査で陽性と判定された。1人は自宅で待機していた。国内で感染が確認されたのは、計163人となった。
韓国政府が日本など6カ国・地域への旅行や訪問をできるだけ自粛するよう勧告。日本以外の対象地域は、シンガポールとマレーシア、ベトナム、タイ、台湾。
中国の感染者は11日までに中国本土で4万2638人。うち死者は1016人。
WHOがスイス・ジュネーブの本部で専門家会合を開催。テドロス事務局長は記者会見で「新型肺炎の最初のワクチンは18カ月以内に準備できる可能性がある」と明らかにした。また、新型肺炎の感染による病状を「COVID-19」と名付けたと発表。
◆2月12日
「ダイヤモンド・プリンセス」で新たに39人の感染が確認される。そのうち10人は乗員。さらに検疫官1人の感染も確認される。検疫官はマスクや手袋を着け、作業ごとに手指の消毒を徹底していたが、防護服やゴーグルは着用していなかった。クルーズ船の感染者は計174人、国内の感染者は203人になった。
安倍晋三首相が感染症対策本部会合で、入国拒否の対象地域に中国浙江省を追加すると正式表明。また1日最大300件程度のウイルス検査体制について、18日までに1日1000件を超える能力を確保する見通しを明らかにした。外務省は中国全土を対象に渡航延期や在留邦人の早期一時帰国を至急検討するよう求めるスポット情報を出した。これまでも帰国や渡航延期の検討を要請してきたが、今回は「至急」の表現を加えた。
加藤勝信厚生労働相が衆院予算委員会で、チャーター機4便で中国・武漢から帰国した計763人のうち、14人が政府が手配した施設に入らず、既に帰宅していると明かす。14人中1人が、陽性だと判明しているとも言及。帰宅者への対応に関し「毎朝、必ず検温してもらい、情報を全部取っている。外出は控えるよう徹底を図りたい」と強調。
チャーター機第1便で帰国し、勝浦ホテル三日月(千葉県勝浦市)と税務大学校(埼玉県和光市)に滞在していた計197人について、厚生労働省は全員が陰性だったと明らかにした。
中国の感染者は12日までに中国本土で4万4653人。うち死者は1113人。
国際自動車連盟(FIA)が中国・上海で4月17~19日に開催予定だったF1シリーズ第4戦「中国グランプリ(GP)」の延期を発表。
ワールドスケートがシンガポールで21~23日に行われる予定だったスケートボード・ストリートのアジア選手権の開催を延期すると発表。
◆2月13日 国内で初めて感染者が死亡
「ダイヤモンド・プリンセス」の船内で待機する乗客乗員約3500人のうち、陰性が確認された希望者について14日から下船させると政府が発表。これまで乗員乗客に全員待機を求めていたが、体調悪化への懸念から方針を一転。また新たに日本人29人を含む44人の感染も確認。
和歌山県は和歌山県湯浅町の済生会有田病院に勤務する50代の男性外科医が新型コロナウイルスに感染したと明らかにした。同病院では医師が接触した人全員にウイルス検査を実施。千葉県も同県内に住む20代男性の新型コロナウイルス感染が確認されたと発表。男性は2月2日から発熱などの症状が続いていた。
ウイルス検査を受けていた神奈川県の80代の日本人女性が死亡。死後に検査結果が出て、陽性が確認された。国内で感染者が死亡したのは初めて。女性には中国との明確な接点がなく、日本国内で市中感染が起きている可能性が浮上。
都内に住む70代の個人タクシー運転手の男性が新型コロナウイルスに感染。男性は1月29日に発熱の症状で都内の医療機関を受診。症状が改善せず、2月3日の再診で肺炎像が確認された。その後に入院し、ウイルス検査で13日に陽性と判明。この男性は死亡した女性の義理の息子だった。
政府は首相官邸で新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・安倍晋三首相)の会合を開き、感染拡大を受けた緊急対策をまとめる。感染拡大阻止に向けて検査体制の強化やマスクの増産などを支援するほか、中国国内の工場の操業停止を余儀なくされた自動車産業や訪日客の激減で低迷する観光産業に徹底した資金面の支援を行う。品薄が続くマスクを増産する企業の設備導入を支援し、3月の国内供給量を先月比2倍の6億枚超に増やすとした。また、中国国内での操業停止や国内工場の減産に苦しむ自動車産業や、宿泊キャンセルなどで経営難に直面する観光業を支援する。
東京五輪の準備状況を確認する国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会などの事務折衝が東京都内で始まる。森喜朗会長は新型コロナウイルスによる肺炎の拡大に触れ、「無責任なデマも流されたが、東京大会の中止や延期は検討されていないことを改めてはっきり申し上げたい。政府と連携し、冷静に対応したい」と強調。
国内での感染確認は、死亡した神奈川県の80代の日本人女性や東京都内のタクシー運転手、さらにはクルーズ船感染者218人(日本人110人)を含めて、計251人となる。
中国の感染者は13日午前0時(日本時間同1時)時点で中国本土で5万9804人。うち死者は1367人。
ラグビーの国際統括団体ワールドラグビーが4月に香港とシンガポールで開催が予定されていた7人制のワールドシリーズ(WS)を10月に延期すると発表した。
◆2月14日 沖縄県で初の感染確認
東京や神奈川、和歌山、沖縄など6都道県で新たに計7人の日本人感染者を確認。これとは別に政府チャーター機第3便で帰国した60代の邦人女性1人の感染も確認。国内での感染者は「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船者らを含め計259人となる。感染の経路が不明確な人も含まれ、市中感染の懸念が増大。
和歌山県で新たに感染が判明した70代男性は、同県湯浅町の済生会有田病院を受診していたことが分かる。済生会有田病院ではこれまでに勤務する50代の外科医が肺炎を発症していたが、男性が受診した際には、外科医は既に体調を崩して休んでおり、県は2人が別々のルートで感染したと推定。
北海道で感染が新たに確認されたのは道内の50代男性は海外への渡航歴はなし。道内での感染は2例目。
東京都も新たに都内在住の2人の感染を確認。いずれも13日に感染が確認された70代の男性タクシー運転手の濃厚接触者。この運転手は1月18日に屋形船で約80人が集まったタクシー組合の新年会に出席。新たに感染が判明した2人は組合の事務員の50代女性と屋形船の従業員の70代男性。組合の事務員は新年会には参加していないが、事務所で運転手と接触していた。
神奈川県で感染が確認されたのは横浜市の消防職員で30代男性。2月10日にダイヤモンド・プリンセスから感染者を病院に搬送するなどしていた。搬送から数時間で発熱していることから、搬送業務の前から感染していたとみられた。愛知県でも60代男性の感染を確認。この男性は1月末から2月7日まで妻と米ハワイに滞在していた。
沖縄県で感染が判明したのは60代の女性タクシー運転手。九州・沖縄での感染確認は初めて。2月1日に那覇に寄港したダイヤモンド・プリンセスの乗船者4人を乗せた。
国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長は東京都内で「この国の公衆衛生当局を信頼している」と述べ、東京五輪を予定通り開催する考えを示した。
「ダイヤモンド・プリンセス」で広がる新型コロナウイルスの集団感染に関し、日本政府の対応に海外から厳しい視線が向けられた。乗船者らがメディアを通じて船内環境に不満の声を上げ、それに各国政府が反応。24人の乗客が確認されているロシアでは、外務省のザハロワ報道官がラジオ番組で「これまでの対応には多くの疑問がある」日本政府を厳しく非難した。
中国の感染者は14日までに中国本土で6万3851人。うち死者は1380人。
WHOはIOCのコーツ調整委員長が東京五輪の中止や延期は不要だとWHOから伝えられたと説明していることに関し、開催の是非について「何も助言はしていない」と否定。コーツ氏は東京で同日開かれた記者会見で、WHOから東京五輪について「中止や延期は特に必要がない」と伝えられたことを明かしていた。WHOで緊急事態への対応を統括するマイク・ライアン氏はこれに対し「現時点で詳しい協議は行っておらず、何の結論にも達していない」と述べた。
ソニーが15、16日に東京都品川区で開催予定だった就職活動中の学生向け企業説明イベントを中止。
日本バスケットボール協会は2021年男子アジア・カップ予選の日本vs中国(21日、千葉ポートアリーナ)が延期されたと発表。
◆2月15日 和歌山県の済生会有田病院で初の院内感染
「ダイヤモンド・プリンセス」で新たに67人の感染が確認。内訳は乗客47人、乗員20人。東京都でも8人の感染が確認される。
和歌山県では同県湯浅町の済生会有田病院の関係者で新たに3人の感染が確認。仁坂吉伸知事は記者会見で「院内でうつったと考えられる」と述べた。院内感染が明らかになるのは国内初。最初に感染が確認された50代の男性医師が、当初「自宅で療養」としていた日に、県外の病院で勤務していたことも判明。
国内での感染者は最初の発見から1カ月でクルーズ船の285人を含め計338人となった。
中国の感染者は15日、中国本土で6万6492人。うち死者は1523人。
フランスでは中国人観光客が死亡。欧州での死者確認は初めて。アジア以外の地域でも死者は初めて。死亡したのは、中国湖北省出身で80歳の男性。
新型コロナウイルス蔓延を受け、感染源である中国からの入国を制限する動きが拡大。中国国家移民管理局の発表では、何らかの入国制限措置を取っている国・地域は2月14日現在で130。米国やオーストラリアなどは、14日以内に中国に滞在した外国人の入国も認めないなど、厳しい措置となっている。中国と陸続きのロシアやモンゴル、北朝鮮は、国境閉鎖などの対応を取った。
WHOのテドロス事務局長がドイツ南部で開かれた「ミュンヘン安全保障会議」での演説で、自身の言動が「中国寄り」と批判されていることについて、「他人を批判し、政治化するのは安易なことだ」と反論。