齊藤工がオンラインの可能性と映画界への想いを語る「今のこの動きによって、最終的にまた劇場で至福の映画体験をしてもらいたい」
新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けた外出自粛要請により、映画業界では全国の映画館が休館を余儀なくされ、各地の映画祭も軒並み中止になった。この状況を受けてさまざまな支援の取り組みが進行中だが、それにいち早く反応したひとりが、俳優・映画監督・モノクロ写真家などマルチに活躍する齊藤工だ。テレワークを余儀なくされた状況を逆手にとったプロジェクト『TOKYO TELEWORK FILM』制作を発表、その第一弾を4月29日から5月1日までの3日間プレオープンし話題となったオンライン映画館「STAY HOME MINI-THEATER powered by mu-mo LIVE THEATER」でプレミア上映するという素早いアクションを起こしている。今回そのオンライン映画館の企画を手がけるSPOTTED PRODUCTIONS・直井卓俊代表とともに、齊藤監督が現在の思いを語った。
齊藤工
みんなが “どう難局を乗り越えるか” という共通の問題と向き合っている
齊藤「映画にまつわる動きだけはないと思いますが、このような状況下では二通りの道があって、“様子を見ている”か “無傷でいられなかったとしても開墾をしようとする”というどちらかのスタンスです。そして少なくとも映画業界は、作品の届け方にいたるまで変化の時に直面せざるをえなくなっている。本来、僕自身はアナログな人間でオンライン至上主義ではありませんが、今となってはオンラインがある側面において、コロナウイルスに対抗できる人類の知恵の結晶だとすら思えて。つまりこの新型コロナウイルスの特徴は病気としての実害だけではなく、人と人を物理的に引き剥がすという恐ろしい威力を持っているけれども、我々は会わずともこうしてコミュニケーションをとれます。ですからウイルスと最前線で戦う医療現場での終息を待つことと同時に、ソフトの面では武器があるからには生かさない手はないと思い、テレワークによって何ができるかを考え始めたんです」
――『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督も『カメラを止めるな!リモート大作戦!』の制作表明から1カ月たらずで公開に至り( https://youtu.be/HTk2wqBxVfY )、行定勲監督は『きょうのできごと a day in the home』( https://youtu.be/pc8u9n3HTTA0 )を配信。さらに24人の映画作家が参加する「SHINPA the Satellite Series #2 在宅映画制作」なども始動しています。
齊藤「続々とスピーディーに企画が発表、公開されていますね。みんなが “どう難局を乗り越えるか” という共通の問題と向き合っている。僕が立ち上げ会見に参加させていただいた『ミニシアター・エイド基金』への支援も、観客の方々の “ミニシアターを守りたい” という意思表示が数字に現れています。この基金の呼びかけもそれに対する支援もオンラインで起きていることですから、緊急事態宣言が延長された以上さらに具体的な行動も必要だと感じています。今のこの動きによって、最終的にまた劇場での至福の映画体験をしてもらいたい。あとは僕自身のことを言えば、これまで散々ミニシアターに、しかも今回まさにリアルタイムでアップリンクさんに『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』の上映でお世話になっている最中にこんなことになってしまって、動員や売上というような数字の問題ではなく、まず浅井(隆/アップリンク代表)さんをはじめ、人の顔が浮かんだんです。ですから危機的状況にあることを耳にした以上は「何かできないか?」と思わないほうが僕にとってはおかしい。逆に言うとミニシアターの方たちと今までご縁や接点を築いてこなかったら、違う関わり方だったかもしれません」