新型コロナに有効な「次亜塩素酸水」三重大・福﨑教授らがシンポジウム
新型コロナウイルスの感染拡大によるアルコール消毒液の不足で、経済産業省が独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に要請して行なっていた有効性評価の結果が公表された。「次亜塩素酸水」が一部の「界面活性剤」と共に新型コロナウイルスに対する消毒物資として有効と判断されたことを受け、一般社団法人次亜塩素酸水溶液普及促進会議(JFK)が29日に設立総会と記念シンポジウムを行った。
北海道大学の玉城英彦名誉教授
新型コロナ消毒だけでなく畜産分野にも
越智文雄代表の挨拶の後に、北海道大学の玉城英彦名誉教授が「新型コロナウイルスの有効性」をテーマに登壇し、「新型コロナウイルスだけでなく、次亜塩素酸水溶液の用途を他の領域にも広げるような結果をお示ししたい」と語り、次亜塩素酸水が新型コロナウイルス対策に期待され、エビデンス(科学的根拠)がない中で行った北海道大学の実験結果を紹介した。
「次亜塩素酸水処理によるSARS-CoV-2の不活化」ではpHが2.7と5.5、有効塩素濃度が40-50ppmと40ppmの次亜塩素酸水とJPN/TY/WK-521株のウイルスで供試水とウイルス液の割合を9:1と19:1で混合し、ウイルス感染価の変化を30秒・1分・5分・10分で調べる実験を行い、普通の蒸留水ではほぼ変わらなかったウイルス量がそれぞれ30秒の段階で検出限界(99.999%)以下となった。玉城名誉教授は「おそらく強酸性次亜塩素酸水の実験は、世界で初めてと言ってもいいくらいのコロナウイルスに対する不活化のデータです」と説明する。
畜産業界でも次亜塩素酸水溶液が使用されているとして、同じ条件の次亜塩素酸水で行った豚熱(CSF)ウイルスの不活化実験ではpH2.7、有効塩素濃度40-50ppmの次亜塩素酸水では先ほどと同様に30秒で不活化。pH5.5、有効塩素濃度40ppmの次亜塩素酸水で供試水とウイルス液の割合を9:1、19:1、99:1で混合した場合は9:1では99%まで、19:1と99:1では検出限界以下まで不活化した。
玉城名誉教授は「畜産の現場には多くの有機物(汚れ)が存在しているが、次亜塩素酸水を活用して噴霧や掃除を行えば問題ないと思います。データ上は次亜塩素酸水を多く使えば使うほど、有機物と拮抗してウイルスの不活化能が高まる結果になっています。私たちの行った実験条件のもとでは、こういう素晴らしい結果が出たことを皆さんと共有したい。畜産業界はもちろん歯科医師からもメッセージをいただき、次亜塩素酸水の有効利用はいろいろな分野に広がってきている」とまとめた。
続いて東京工業大学の奈良林直特任教授が「空間噴霧の現状と可能性」をテーマに登壇。「特に都内で(新型コロナウイルスの)新規感染者数が増えてきて、ご家庭、病院、商業施設、学校、そして劇場などの商業活動に関連する施設を元の状態まで戻すことに、次亜塩素酸水を利用したらどうかと提案します」として、世界各国で食品や施設の消毒に次亜塩素酸水の噴霧が行われていることを紹介した。さらに「我々の持っている免疫には先天性免疫と獲得免疫の2種類ありますが、すべての方がウイルスに感染しても発症しないのは、白血球(好中球)が体内で次亜塩素酸を作り出してウイルスを不活化するためです」と解説。
「私は北海道大学にいたので、畜産分野で次亜塩素酸が活用されていたことも知っています。豚、鶏、牛などに感染症が出ると何万羽、何百頭も殺されてしまいますが、最近そうした事例を耳にしなくなった背景として、次亜塩素酸水が大量に噴霧されている」といい、防疫や環境衛生管理の観点から畜舎内や事務所で次亜塩素酸水溶液の脱臭システムおよび生成機が使われ、競走馬の飼養環境の改善にも効果が見られるという。会場に展示した東工大で開発中の次亜塩素酸水を使った空気浄化システムのデモンストレーションも行われた。
東京工業大学の奈良林直特任教授