新型コロナに有効な「次亜塩素酸水」三重大・福﨑教授らがシンポジウム

三重大学大学院の福﨑智司教授

生体防御機能を応用した次亜塩素酸水溶液の殺菌システム



 最後に三重大学大学院の福﨑智司教授が「空間噴霧の有効性と安全性」をテーマに登壇。「奈良林先生のお話の通り、私たちの生体内の生体防御機能を示しているのが次亜塩素酸です。次亜塩素酸水溶液を使う殺菌システムというのは、この生体防御機能を人為的に上手く効率化して活用する技術」と福﨑教授。微生物(細菌やウイルスなどの微小な生物)制御の基本として、換気で対応できる空中浮遊菌よりも机や椅子、床などの表面付着菌がはるかに多く「表面を濡らさず、人の手を介さずに付着菌を処理できないか、ということで空間噴霧という技術が開発された。微生物制御とは無菌化することではなく、私たちの健康に危害がないレベルまで減少させることが重要」と述べた。

 それには、まず整理整頓で固体表面の面積を少なくし、清掃をして目で見て清潔な状況を作ること。その後で水を使った洗浄を行い、それでも十分ではない時に殺菌や静菌・遮断へと進んでいく。さらに拭き取り洗浄の基礎実験、二度拭きや水拭きとアルコール拭きでの汚れの残り方などから、一定方向に片道で水拭きした後にアルコール消毒しないと効果が落ちることなどを説明した。

 空間噴霧の方法は加湿システムを利用した超音波霧化、二流体噴霧、通風気化方式があるが、今回は超音波霧化について解説。噴霧された微細粒子は重力に従って落下し、次亜塩素酸水の揮発に伴って粒径が小さくなり、やがて目に見えなくなるため室内空間で作用する次亜塩素酸は、微細粒子に留まるものと揮発して気体状になって拡散したものとなる。「これらを微生物制御に利用するために、労働安全衛生法の作業環境評価基準、日本産業衛生学会の許容濃度に則った安全性の基準が設定され、実験動物を用いた吸入毒性試験や目刺激性試験を行うなど各社で安全データを保有している」という。

 そのうえで90立方メートル・無人・閉扉・気流攪拌なしの室内空間でpH5.8、50ppmの弱酸性次亜塩素酸水溶液を噴霧口の高さ1.0mから1時間噴霧した場合、噴霧口から2m地点で濃度を測定すると床面では20ppbだが顔の高さ(150〜170cm)では5〜7ppbとなり、微生物が比較的多い場所において濃度が機能的に高くなる実験結果を示した。同様に微細粒子中の次亜塩素酸濃度実験、過剰噴霧を想定した実験なども紹介。

 福﨑教授は、次亜塩素酸水溶液を扱うメーカーと消費者の間に大切なのは信頼感だとし、「消毒剤成分が有害か有用かは、濃度と摂取量で決まると思います。もし次亜塩素酸がなかったら、水道水の衛生状態はどうなるのか。あったほうが有益なのですが、その場合はしっかり濃度を制御することを守れば良いのです。自動車や餅、フグなどにも事故がありますが流通しているからといって『けしからん』ということにはなりません。それは安全な運転や調理、消費の方法があるからです。フグで言えば職人さんが毒性のある部分を取り除いてくれる、わざと毒性のある部分を出さないという信頼感があって、初めて商売が成り立つのだろうと思います」と締め括った。

※誤解を与える表現があったため17時25分に文章を一部修正いたしました。
東工大で開発中の次亜塩素酸水を使った空気浄化システムのデモンストレーション
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