あなたの隣にもいるかもしれないLGBTsの生き方に迫るドキュメンタリー『らしく~My Story~』


 出ることによって誹謗中傷を受けるのではといった恐れを感じることはなかった?

井上「恐れは普段からあります。でもそれを越えるだけの価値があると思いました」

 番組ではゲイ、レズビアン、トランスジェンダーとさまざまなケースの方が出演しています。

村上「LGBTsなのでゲイだけを出すのではなく、いろいろな人たちに出てもらっていろいろなメッセージを届けようと思いました。それにセクシュアリティもLGBTというと、4つに思われるかもしれませんが、実は4つだけではないんです」

 このプロジェクトや番組以前からLGBTsの方々と深く接する機会は多いと思うのだが、その中で現在のLGBTsを取り巻く状況は昔と比べて変わっていますか?

井上「すごく良くなりましたよね。これまではまずLGBTという言葉が取り上げられなかった。トランスジェンダーもそうですが、性同一性障害という言葉についても“なんじゃそりゃ?”って感じだったところから、なんとなくでも“あれね”ってイメージがわくようになっている。そこは本当に大きな変化だなと思います。ただ現状、僕としては生きづらいことはまだまだあるなという感じです。個人的にもそうだし、実際にいろいろな方の話を聞いていても、まだまだだなと思います」

 生きづらさって具体的には?

井上「僕の場合はトランスジェンダーに特化して無料相談をやっていて、今までたくさんの方の話を聞いてきました。傾向は変わってきましたけど、やっぱり結婚となった時に、相手の親が認めてくれないとか反対されるケースが多かったりします。いまだにです」

 親の世代というとかなり年齢が上ということもあって、まだまだ受け入れられない人が多いのかも…。

井上「結婚相手としてわざわざLGBTの人を選ばなくてもいいだろう、っていうケースはいまだに多いです。例えば僕の場合は女性から男性になって戸籍上も男性になっているんですけど、好きになるのは女性です。では女性と結婚しましょうとなったときに女性側の両親に“トランスジェンダーじゃなくて普通の男性を選びなよ”とか平気で言われちゃったりするんです」

村上「子供も産めないし」

井上「そうなんです。それを言う気持ちも全然分かりますし“なんだよ”とは思わないですけど(笑)。でもやっぱりこれは生きづらいんじゃないかな、これはこれからも変わらないんじゃないかって思います」

村上「そうだね。変わらないね」