“忙しいマウンティング”“自然童貞”、ここがヘンだよ東京人! 東京は本当に諸悪の根源なのか――緊急リスニングを実施
ホントかどうか疑わしい謎の「忙しいアピール」
「東京のイヤなところはありますか?」。単刀直入にそう投げかけると、回答者の一人である北海道釧路市出身・東京歴約30年のアラフィフ男性が、忌憚もへったくれもなく答える。
「俺がすごい気になるのは、地下鉄のホームの導線にボケ~っと突っ立っている人が多いこと。鉄道会社の責任かもしれないけど、ホームでの人のさばき方が適当すぎる。東京は人が多いから、住んでいる人は慣れてきて気にならなくなるんだろうけど、あれは迷惑だと思うよ」
“気が利かない”という点に関しては、2人目の参加者である茨城県下妻市出身・東京歴約10年のアラサー女性も同調する。
「母の体が悪くて車椅子を使うこともあるんですね。茨城から東京に通院する際に、公共の場でイヤ~な空気を感じます(苦笑)。そもそも田舎はスペースが余っているから、せせこましさみたいなものがないのかもしれません。でも、東京ってみんな急いでいるからなのか、母を見て、「自分より大変そうな人がいる」ことを分かっていながら、「分かるんだけどこっちもすごい急いでるんだよね」っていう雰囲気を出す。母親もすごい気にしてしまっていて。東京って、なんで「俺だって忙しいんだから」みたいなマウンティングを取るんですか?」
たしかに、東京人は“繁忙マウンティング”を取りがちかもしれない。あらゆるエクスキューズに対する万能薬であるかのように、「忙しいアピール」をする人は少なくない。しかし、そういった気が利かない人たちの全員が、生粋の東京出身者だとは思わないとも付言する。「自分たちのような地方出身者が、いつからかそうなっているんだろうなって。だって、東京で暮らしている人のほとんどって、もともと地方から上京してきた人でしょ?」と。
「「諸悪の根源は東京だ」なんてよく言えたよね。クラスターの中には兵庫県の出身者だっているかもしれない。政治家は、自分に責任の所在を追いたくないから誰かになすりつけているだけ。そのスケープゴートに東京はされただけ」(導線なんとかしろアラフィフ男性)
今回のコロナ騒動で、「対東京」にとりわけ過敏に反応するのは、地方で暮らすシニア層や高齢者だ。重篤化リスクが高いことに加え、生まれ故郷に根を張り続け、東京とは縁を持っていないからこそ――東京の実態を知りえないからこそ、メディアが発表する表層的な数字におののき、過剰に東京を意識することにつながっている。
反面、上京者は地方の空気感と、東京の実態を知っている。先の下妻女性は、「いつからか東京のリズムに取り込まれた気がする」と、もどかしさを語る。
「一時期、「こんなに自分って意地悪だっけ?」と思うことがあって凹みましたね。田舎のリズムで暮らしていたときの自分は、ゆったりしていたし、人にも優しかったと思います。でも、東京に来て……自分自身の余裕がなくなってしまったからかもしれないですけど、あるときふと振り返ったとき、「意地悪なことをしたかも」って思うことがありました。東京の人になったのかもしれないけど、あんまりうれしくないなかったですね」
東京は複雑なのである。こういった人々がたくさん暮らしているだろう東京を、十把一絡げに扱うのは、少々雑じゃなかろうか。