“忙しいマウンティング”“自然童貞”、ここがヘンだよ東京人! 東京は本当に諸悪の根源なのか――緊急リスニングを実施



素朴なギモン「東京人って、自然童貞なんですか?」



 3人目の参加者は、何かと揶揄されがちな埼玉県民。『飛んで埼玉』でも示されているように、埼玉県内部にもいくつか派閥があるが、今回協力してくれたのは、川越市出身の40代男性。今も川越に暮らす小江戸民である。

「埼玉は東京からバカにされたりしますけど、僕らからすれば「東京はわざわざ住む場所ではない」ということ(笑)。僕自身、出勤地は東京ですけど、アクセスできる圏内にあるわけで、どうして家賃も物価も高くなりがちな東京に住まないといけないの、と。遊びに行く場所だったり、働きに行く場所だったり、買い物に出かける場所だったり、そういう対象であって、埼玉にとって東京は都合の良い対象でしかないんです。だから、「東京なにするものぞ」みたいな感情はない。埼玉の北部や奥地は違うかもしれないけど、そう思っている埼玉県民は少なくないと思います」

 埼玉にとって、東京は良いところを“つまみ食い”するスポットでしかない――。近くのコンビニに行く感覚で、東京に行くだけ。「コンビニは便利だけど、だからといってコンビニに住みたくはないじゃないですか?」と言われると、「そりゃそうだ」と頷くほかない。

「東京の“よく分からない感覚”にマヒしている人って多いと思うんです。街路樹や公園の緑を見て、「自然が多い」とか「緑が豊か」とか口にする人がいると思うんですけど、全部に人の手が入っているわけで、「全然自然じゃないよ」って。中目黒の川沿いで自然を感じるなんて、どうかしてますよ。そういう人って、畑や田んぼを見ても「自然が豊か」って言ったりする。「自然童貞ですか?」って思いますね。東京人を演じているところがあるんじゃないですかね。その割には、面倒くさい地元のこだわりやプライドを持った地方出身者が多い。どっちなんだよ!って(笑)」

 地方出身者が、いま港区に住んでいたとする。その港区民が、「埼玉はないでしょ」なんて鼻で笑うこともある。そいつの出自は、一体、いまどこにあるんだろうか。紅茶の樹の原種は、中国雲南省からチベット、ミャンマーの山岳地帯に自生していたとされる。イギリス貴族社会で人気を集めたから、起源はイギリスに変わるのか――。

「東京の昼間人口って、結局のところ埼玉や千葉から流入することで形成されている。東京が諸悪の根源って言われたところで、何をもって「東京なの?」とは思っちゃいますよね。 埼玉の人間も東京にはお世話になってますから」(40代小江戸民男性)

 東京に何か言い残したことはないですか? 最後に、三者へ問うてみた。導線なんとかしろアラフィフ男性が切り込む。

「最近の若い人って、駅前やコンビニの前で酒を飲むじゃん。あれってすごいカッコ悪いと思うんだよ!」

 それはもう日本中のいたるところにある話だからして、「マナー警察の回にお願いします」とそっと伝えた。嫌な沈黙を断ち切るように、下妻女性が口を開く。

「東京に来て、一番イヤなことって何だろうと考えたとき……これは女子という立場上の話かもしれないけど、東京に来てからの方が、「結婚や出産のかたちは多様であるべし」みたいな押し付けがましさをとても感じること。ずっと田舎で暮らしてきた両親は、「結婚して子どもを産む」といったスタンダードなマインドの持ち主で、私もそういった考え方に違和感を覚えません。でも、東京って、とかくライフスタイルの多様性が叫ばれているから、何かしらの属性に属さないとカッコがつかないような堅苦しさを感じます(苦笑)。キャリア形成をきちんと考えてます、みたいなことを言わないとダサいと思われる雰囲気がある。 もっと適当でいさせてほしい」

 ここがヘンだよ東京人――。掘り下げれば、まだまだいびつな東京ルールが出てくるかもしれない。


(取材と文・我妻弘崇)
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