40年以上前に原案が! SNS映えで人気のミニチュアテーマパーク『スモールワールズ TOKYO』誕生秘話
近藤さんは「すでにあった企画書をもとに作っていっただけ」と言うが、企画者の堀氏自身も実現しえなかったアイデアを実現させるという大きな挑戦だけに、相当な困難があったはず。実際に、当初は2020年4月に予定していたグランドオープンが新型コロナウイルス感染症拡大の影響により 6 月に延期になるという予想外の事態にも直面している。
「開業延期は確かに予想外でしたが、それでも我々は早くに世界的な感染拡大の状況をつかみ、海外の感染対策を視察するなどして、徹底した対策を組みこんでいくことができまし た。もちろん、開業前にもいろいろなことがありました。そういうとき心の支えになってくれた本が、堀さんと出会った当時にも読んでいた『人生は出会った人で決まる』。これは、堀さん自身の意思決定に深く関わった人々との出会いが記されている本です。堀さん自身も、 もとは大手広告代理店に所属しテレビ局のプロデューサーをしていたところを江戸英雄さんらと出会い、当時はベンチャーだったオリエンタルランドに入社して東京ディズニーランドを誘致するわけですが、そういった経験から綴られる言葉を通して“どんな人と出会うか”が、いかに重要か考えさせられる本となっています」
とくに参考になったのが“どんな人と付き合っていくか”という視点だったという。
「堀さんってネガティブな縁はさっさと切っていくんですけど、僕はもとが銀行員で、銀行員とは基本的にどんな人とでも笑顔で付き合わなければならないと教え込まれるものなので、そういう考え方ができるようになるにはかなり大きな壁を乗り越えなければいけませんでした。でも確かに困難な状況を分析してみると、あきらめるとか切り替えることで新たな道が生まれる場合が多々あるんです。我々も開業を目前に、急に1つの企業から出資を断られるという事態に直面したのですが、その2週間後には別の同業他社さんが名乗りを上げてくれたことがありました。堀さんのそういった考え方に触れてからは僕自身、課題に直面しても、課題があるなら解決するために動くというシンプルな受け止め方ができるようになりました。それが習慣づいて、いつの間にか答え探しを楽しめるようになりましたね」
何より近藤さんの心の支えになったのは…。
「実際は堀さんの言葉というより、東京ディズニーランドそのものなんです。課題が生まれたときや選択しなければならないときなど、何かあると僕はいつも東京ディズニーランドに行っていました。それも、アトラクションのホーンテッドマンション。あのゴースト・ホストの声は、堀さん自身が演じているんですよ。直接、会いに行くと怒られそうだから(笑) ホーンテッドマンションの声を聞きながら堀さんの視点に立ち返っていました。堀さんは、普段はとても優しい方なんですが、ある日“君は僕の時間を一体なんだと思っているんだ”と、 ものすごく怒られたことがあったんです。そのときは本当にへこみましたけど、後になって、あれは堀さんなりの“卒業証明書”だったんだと気づきました。もう大丈夫だから、ここから 先は自分で考えろ、と」
人気のキャラクターの世界観を取り入れるなど、現代にも刺さる要素が随所に仕掛けられているSMALL WORLDS TOKYO。SNSやメディアでも話題を呼び、すでに若い世代にも多くのファンを生んでいる。
「開業するまで、投資家や関係者からずっと“10代、20代の女性が来るような施設になるとは思えない”という意見をもらっていたのですが、実際、今の客層は10代20 代の女性が中心です。女性だけで遊びに来ているグループも多く、自分たちが立てた仮説は間違っていなかったなと実感できました。確かに“ミニチュア”とだけ聞くと、鉄道模型ファンや、大人の男性中心というイメージがあるようですが、我々が行っているのはミニチュアの展示ではなく、心のよりどころになるエンターテインメントを提供することなのです。その“心のよりどころ”を強く求めているのは、まさに10代や20代、30代といった現役世代。何かにチャレンジしている人が、ふと気を抜くことができる。それが今求められるエンターテインメントの根幹にあると思います」
まだスタート地点に立ったばかり、と近藤さん。
「現在のスモールワールズは、ようやくプラットフォームができたところです。これからお客様やクリエイター、企業やプロジェクトなど、いろいろな方がこの世界に入り込み発展させてく。これは、そういうエンターテインメントなのです。すでにクリエイターの方々に表現の場として活用していただく企画を始めています。また、スモールワールズにはエンターテインメントとしての側面と、日本の企業によるミニチュア万博事業としての側面という2つの面があるのですが、堀さんも具体的に深掘りできていなかった“ミニチュア万博”として の側面も、今後さらに発展させていくつもりです。今は、スモールワールズを世界展開につなげるプロジェクトの始まりに、ようやく立てたという気持ちです。何しろ 10拠点作らないとディズニーランドに追いつけないので、まだまだ先は長いですが(笑)」