徳井健太の菩薩目線 第74回 つまらない輩やグループほど、アルコール度数の高い酒を次々とあおるんだよね



 アルコール度数の高いストロング系チューハイって怖いよね。実際、アルコール依存の助長やら健康被害やらが指摘されていて、この手のRTDの生産が一部ストップするケースもあるほどだ。

 酒は不思議なものだ。飲む人によって捉え方が変わる。度数の高いストロング系を飲んでいる人たちは、酒を合法ドラッグか何かだと勘違いしている節がある。「ぶっとびたい」から飲んでいる。そんな印象を受ける。

 酒は、呑んでも呑まれるな。なんてことを言われるけど、まったくその通りで、酒は美味しく飲みたい。家に帰った後もきちんと記憶があって、翌日どんな会話をしたのか覚えていたい。そうは思っていても、やっぱりどこかで見境を飛び越えて、痛飲してしまうこともある。ところが、ストロング系チューハイは、その手のたしなみの介入余地が一切ない。一杯目からぶっとぶ気満々の輩が飲んでいる。“ほろ酔い”なんて言葉は知らない。こんな飲まれ方をするだろうなんて、ストロング系チューハイも想像していなかったと思うよ。ストロングとは名ばかりの悲劇。

 俺は、昔から「なぜ人はテキーラを飲みたがるのか」、ナゾで仕方がなかった。ある人がこう教えてくれた。

「開始早々テキーラばかり飲む奴がおるけど、会話が面白くないから飲むんよ。ぶっ飛んだ方が楽しくなる(と錯覚する)。それでテキーラばかりを飲む」

 なるほどな、と思った。なぜ、つまらなそうなグループの大半が、しこたまテキーラをあおっているのか――。それは、そのグループの会話も、そのコミュニティーのつながりも、つまらないから。手っ取り早く脳の回路をおかしくして、楽しんでいる体にしたいだけなんだ。

 ところがどうして、根本がつまらないもんだから脳がぶっ壊れたとしても、つまらないまま、だからおそろしい。考えてもみてよ。つまらない人たちの前後左右がクラッシュした会話が、どうして酒の力をもってして面白くなる? それをワハハハハと笑えば笑える人ほど、どんどんつまらなさが加速していく。手っ取り早くぶっ飛んで、床に倒れて、吐しゃ物を撒き散らす。まったく記憶に残っていないにもかかわらず、翌日、「楽しかった」と、まるで自分に言い聞かせるように思い返す。バカじゃないのかと思う。

 つまらない奴らが、イッキ飲みなんかを繰り返す。ストロング系チューハイは、おいしかったかもしれない。だけど、つまらない輩たちによってイロモノ扱いされてしまった。つまらない人たちって、いろいろなものを破壊していくんだ。

 テキーラは高価なものだってあるし、おいしいものもたくさんある。 飲んでいる人間が甲類焼酎のように飲んでしまったら、それはもうテキーラじゃないよね。 だったら甲類焼酎をイッキ飲みすればいいと思うんだけど、その発想はないらしい。テキーラを飲んでいるのか、ワケの分からない見栄を飲んでいるのか。俺にはよく理解できないけど、甲類焼酎じゃなくてテキーラをあおる。 もし街中で、若者が甲類焼酎のイッキ飲みをしていたら拍手をおくりたい、そして酒をやめさせたい。

 お酒を飲むことで自暴自棄になりたい人だっているだろう。世知辛いから酒で中和したい人だっているだろう。酒を飲む意味合いは、人によって変わってしまう。「今日飲みに行こうよ」、そう誘われたとして、本意は「ぶっ飛びにいこうよ」 なのかもしれない。てっきり、「しゃべるお供にお酒でもどうですか」と解釈していたのに、どうやらそれは俺の意訳だったみたい。

「飲みに行こうよ」と誘われたとき、語尾のイントネーションが下がっているのであれば、「しゃべるお供としてのお酒」なんだろう。語尾のイントネーションが上がっているのであれば、ぶっ飛ぶ意向のサインなんだ。明日起きるのがツラいから、俺はもう語尾が上がるお誘いは断ることにしている。

【プロフィール】
1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。吉本興業所属。
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