徳井健太の菩薩目線 第76回 『卒アルラジオ』を担当するにあたって「自分でもどうなるか分からない」

11月から、『卒業アルバムに１人はいそうな人を探すラジオ』（文化放送）というラジオ番組の水曜パーソナリティを務めることになった。各曜日のパーソナリティは、相席スタート・ケイ、ラランド・サーヤ、秋元真夏（乃木坂46）が担当する。スタートするにあたって番組サイドからコメントを求められたので、

「コロナで苦しんでいる人がいる、その裏で儲けている人もきっといる。不幸をただ辛い辛いと嘆く人がいる、大人になってからその経験のお陰で人に優しく出来る人もいる。世の中は表裏一体、けれど常に諸行無常、生きるのは苦行。その苦しみさえも、楽しめるようになれば世界はバラ色に変わる。…そんなことをラジオでお伝えできたらいいな、って思います」

と答えたら、俺だけ場違いすぎるコメントでひっくり返ったよね。一人だけ違う競技をしてしまった。ご想像の通り、もうどうなるか分からないんだ。

不思議なもので、『オレたちゴチャ・まぜっ！～集まれヤンヤン～』の卒業直後に、この話が降ってきた。「人間ってそういうもんだよ」なんて言われるけど、そういうもんなのかもしれない。

俺1人でパーソナリティをするなんてことは、過去に例がない。現時点（9月末）で、詳細は明らかになっていないから、多分、このまま何も知らされないままブースの中に迷い込むんだと思う。「こうご期待」なんて言葉は、夢のまた夢。オファーを伝えられたときは、仮のタイトルだった。『卒業アルバムに１人はいそうな人を探すラジオ』という正式なタイトルは、「お笑いナタリー」のネットニュースを見て、初めて知った。

トークがあって、大喜利があって――、なんでも2時間もあるそうだ。多分、俺は変なことを言い始めると思う。テレビの収録だったら、周りが「え……？」って戸惑うだろうワケの分からないことを言い始めると思う。テレビであれば、共演者がいる手前、「いかんいかん。空気を殺すところだった」と我に返れるけど、ラジオは制御するものがない。まぁ、プロ野球のナイターが行われないナイターオフ期間限定で放送される半年限定だろうし、タイトルからして偏っているだろうから、変な題目を唱え始めても大丈夫だろうとは思っている。

例えば、なくなった人の追悼的なニュースを見て、俺は「でも分からなくないですか？　この人は幸せだったかもしれないじゃないですか」なんてことを口にする。求められていないだろうコメントは、冷や水にしかならない。どう考えてもおかしな空気になってしまう。でも俺は、偽善的なことや可もなく不可もなく的な言葉が出てこない。そうならないために、どうしたって発する言葉は、俺の場合、下手くそなコメントになってしまう。変な空気にするか、下手くそなコメントか……どれを引いてもハズレしかないくじを引くようなもの。だからして、俺は大衆的なコメンテーターには向いていない。でも、どうやらラジオは違うらしい。ハズレと思うかアタリと思うかなんて、人それぞれ。

それにしても、なぜ俺なんかに白羽の矢を立てたのか分からない。分からないけど、ケイ、サーヤ、秋元真夏の中に俺を入れたという、強烈な意思は感じる。危険球を投げるときのベンチのムードって異常だからね。そういう意図が見える。俺は、ビンボールだ。

もちろん、やる気はある。ただ、「なんかなったらいいな」としか言いようがない。 芸能界って、その“なんか”が全く予想できない。『ゴッドタン』で三四郎がハネたのは、骨折していたからってのが大きい。収録に合わせて狙って骨折なんてできるものじゃないし、そんなことを考える人間なんていないだろう。きっと彼らだって骨折してしまったときは、「一世一代のチャンスをフイにしてしまった」と思ったかもしれない。ところが、その骨折が猛烈な追い風を吹かせることになった。「持っている」とか「運」と言えば聞こえは良いけど、その運を倍々にできたのは、彼らの実力であって、“なんか”が舞い降りてきた。それは予想できないものなんだ。

歳を重ねれば、ことさら「なんかなったらいいな」くらいがちょうどいい。誰かが見ていてくれれば、それでいい。“本気で思う間違っていること”は、もう仕方のないことだから。謝りようがない。そんなラジオにできればいいと思っている。

徳井健太の菩薩目線は、毎月10日、20日、30日に更新