徳井健太の菩薩目線 第81回 「女子メンタル」から学んだ“自分を削れる”ことの尊さ

『まっちゃんねる』内で放送された「女子メンタル」が、とにかく面白かった。

「女子メンタル」は、Amazon Primeで配信されている『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』のスピンオフ。密室で参加者同士が笑わせ合い、最後まで笑わなかった者が勝者となる、という点は同じ。違うのは、登場するのが芸人ではなく、「女子メンタル」の名の通り女性タレントが主役ということ。一体、どんな笑かし合いになるのかと考えていたけど、朝日奈央、ファーストサマーウイカ、ゆきぽよ、峯岸みなみ、松野明美、浜口京子、金田朋子の7人が、ここまで面白い舞台を作り上げるとは思わなかった。素晴らしいものを見させていただき、ありがとうございました。敬称略で申し訳ない。

とりわけ、面白さを牽引していたのは、峯岸みなみ、朝日奈央、ファーストサマーウイカ――、元アイドルの3人だった。彼女たちのおのれの削り方に尽きると思う。芸人だなって、心底震え上がった。自分を削るという素晴らしさ、犠牲心の強さが、笑いに変わる。人間って、バカにされて笑われるのは避けたい生き物であって、「恥ずかしい」と感じてしまう。でも、俺くらいのおじさんの年齢になると、たとえ笑われていたとしても、笑いは笑いだと思えるし、その人が生み出していることに変わりはないから、素直にすごいことだと感心してしまう。

いろいろなタイプのアイドルたちと仕事をしているなかで、面白い子はどんな子だろうと考えると、自分がどう映ってもいいから「この場が盛り上がったら」なんて犠牲心がある子は、だいたい面白い。アイドルになるような子は、おそらくみんながみんな、小さい頃は「あなたはかわいい」とほめられて育てられてきたと思う。いつしか成長して、周りを見渡したとき、自分よりかわいい子がいることに、うすうす気が付く。

芸能界で生きてくためにはどうしたらいいんだろう。そんなことをふと考えたとき、「それでも私はかわいい」と思うアイドルもいるだろうし、「自分を削ってみよう」というマインドになるアイドルもいるだろう。自分のかわいくない部分、意地悪な部分すらも、誰かが笑ってくれるのなら最大限に開放する。峯岸みなみ、朝日奈央、ファーストサマーウイカの3人は、結晶ように輝いていて、何もかもさらけ出し、全裸以上に全裸だったと思う。

人間ってバカになることが、想像以上に難しい。みんなどこかでセンスだったり、個性を出したりしたいと願うから。「こいつ面白くないんですよ！」と指さされて、「やめろーッ！」なんてへらへら笑って返して、お客を笑わせるようになるまで、10年くらいはかかる。プライドを壊すためには、それくらいかかる。ちょっとやそっとで壊れないから面倒だ。

プライドは砕かれるものなのか、はたまた自分から壊しにいくものなのか。それが問題だ。ほとんどの人が、20代か30代のどこかで、同じ業界の強者と一対一で向き合ったときに、「かなわねえな」と思ったはずだ。願わくば、そのときにプライドなんてなくなった方がいいと思う。

そう思ってもなお、自分の仕事が好きで、「食っていくためにはどうすればいいか？」と考えたとき、はじめて他者も認めてくれるプライドが生まれるのではないかと思う。挫折のないプライドなんて存在していなくて、無知な若者が「俺は自信がある」と思っている感情はプライドでもなんでもなくて、単なる気負いでしかない。自分にしかわからないプライドって、「必要ありますか？」。自分はできる人間だと思っていたのに、そうじゃなかった。本当にかわいい人や本当に面白い人にはできないことが、できるようになってきたとき。そこが本当のスタート地点だと思います。

プライドって、気が付いたときにあるものではなくて、育てるもの。どういうプロセスを経て育ってきたのかを自覚していないのであれば、うぬぼれ。売れている人も売れていない人も熟成させた分だけプライドがあって、そのどちらも美しいと、俺は思う。売れている人はそれを目にする機会が多いだけで、売れていない人にも、そういった機会が訪れれば、まばゆい光を放つと思いたい。

プライドは二重構造になっている。一度死んでよみがえったものがプライドだとしたら、スクラップアンドビルドしないと、プライドの無駄遣いだと思うんだよね。