大作邦画「サイレント・トーキョー」に見る日本アクション映画の抱える“問題”【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 先日、終わりました舞台「ウイルス・ブルース」なんですが、2週間経ったところでキャスト・スタッフ、ご来場者様共に感染の報告がなく、皆様の対策へのご協力に感謝するとともに、ほっとする今日この頃です。

 ぼちぼち来年に向けての準備を進めているのですが、早くこういうことを気にせず過ごせる日が来てほしいものです。

 今週も鑑賞記です。では始めましょう。
黒田勇樹
 マシンガンがぶっ放せないんですよ!!!

 あ、いきなりすみません。今回は「クリスマスの渋谷で怒る爆発テロ事件」を中心とするアクションサスペンス映画「サイレント・トーキョー」を観てきました。

 マシンガンがぶっ放せないんです、舞台が日本だと。

 なので、結構な数のこういう作品が「爆弾が仕掛けられているらしい」から始まるのですが、この「サイレント~」は、テイストがどちらかというとシリアスなんですが、やっぱこう…

 まずはOPでマシンガンぶっ放してくれないと!

 緊張感が生まれないんですよね…前半のストーリーがアクションなのかサスペンスなのか、ヒューマンドラマなのか明示されないまま、なんか爆発して、また始まる犯人探しが、日本独特のホワイトボードに写真貼って「会議、会議、会議…」

「相棒」や「踊る大走査線」はこの辺、とても上手くやっていて“コメディ風”か“ミステリー風”をかなり強調してOPを始められています。更に「ダン!ダン!ダン!」という曲調の緊張感を煽る大袈裟なBGM。

 本作は、シリアス路線だったので、日本を舞台にしてその緊張感を演出するのが凄く難しかった気がします。

「注目する点」がわからないまま、演出も控えめ、セリフも最低限、上品な音楽。まるで「有名な人がいっぱい出てます」という紹介映像の様な前半。せめてどこかでガラスが割れたり、バッコンバッコンの殴り合いでも入れてくれれば良かったんですが、そういうこともなく、1時間ぐらいするとようやく「開始5分でこのシーンを見せてくれよ!」というシーンが来る感じ。

 後半がどんなに面白くても、導入が楽しくなければ、観客はもう”受信”してくれません。

“犯人”と”目的”という謎も、開始2分で「この人でこんな理由だろうな」のままなので、物語に引き込まれない。

 キモになるOPの爆破シーンも、僕が世界で一番好きな爆破「ソードフィッシュ」、もう20年前の映画ですよ!力は入れているし、尺もそれなりに使っているのにこれを越えられてない!

 じゃあ、他の表現で勝負しろよ!と思ってしまうのですが…

 僕が「エンタメ思考」なんで、好みの問題もあると思うのですが、別にミステリーもヒューマンドラマも楽しめるタイプなので“どちらにも振り切れなかったことの勿体なさ”“日本を舞台にアクションする難しさ”を、とても感じる作品でした。
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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23

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