加藤勝信 内閣官房長官【2021年の新たなキーワードとは。SDGs達成に向けた日本の成長戦略】


コロナ禍で世界の先端を走るために


――コロナにより社会の働き方や生活の変化が起こっています。政治については今後どのような変化が起こっていくと思われますか。

 政治はそこに生じてくる課題に対応するものと考えています。まずは、コロナの拡大をどう抑制していくのか、また、コロナによって停滞している経済をどう盛り上げていくのか、さらには、その先のポストコロナやデジタル時代に向けて対応していくことで、世界の中で日本が先端を走っていくことが大事だと思っております。日本は良いアイデアはたくさんありますが、製品化・サービス化の面で、他国に先んじられてしまうという面があります。付加価値が得られる部分を取り切れてこられなかった、という我々の反省も含めて、次の時代を迎える中で、日本がより付加価値の高い産業構造に転換していくことが必要だと思います。あとは、コミュニケーションですね。これまで対面が主体でありましたが、それがなかなか難しくなってきている中で、テレワークやウェブを使ってできることが蓄積されてきたと思います。さまざまなコミュニケーションツールを活用する時代ですので、我々もそれに応じた政治のあり方を考えていきたいと思っております。

――官房副長官としてのご経験が生かされている点はありますか。

 官房長官・官房副長官の仕事は大きく3つあります。ひとつは災害や感染症など何かあった時の危機対応です。2013年1月のアルジェリア日本人人質事件では、鎖国状態にあった国と情報収集しながら、いかに国民の皆さんに発信をしていくかということを学ばせていただきました。災害時には、地元の自治体と連携を取りながら、スピード感を持ってどう対応をしていくかが求められます。2つ目は政府内や国会との調整役です。その時々の課題や問題を早くに察知して、関係する人と意識を合わせながら対応していく必要があり、日頃からのコミュニケーションや信頼関係が大事になってきます。最後は、政府のスポークスマンとしての役割です。現在、1日2回記者会見をしております。基本は記者の方の質問に答える形ですが、今の時代はインターネットなどを通じて、その後ろに多くの国民の皆さんが見ておられます。いかに分かりやすく発信をしていくかが大事です。日頃どんなことが起きていて、どういったことに関心を持たれているのか、アンテナを張って、情報収集していかなくてはと思っております。

――公務ご多忙の中、オンオフの切り替え方やストレス解消法などを教えてください。

 あまりオンオフの意識はしていないのですが、週末に時間があるときは散歩をしたり、本を読んだりしています。週に1回は近所の明治神宮へ参拝にも行きます。昨年は明治神宮鎮座100年という記念のタイミングでもありました。また、どうしても運動不足になりますので、議員会館の1階からこちら(11階)まで階段で歩いて上がっています。官邸内でも基本的には階段を使います。せめてそのぐらいのことをしないと、と思っておりますね。

――最後に若者に向けてのメッセージをお願いいたします。

 SDGsやそのひとつの取り組みであるカーボンニュートラルの目標達成時期は、2030年、2050年であり、20代や30代の方々が中心となって活躍される時代です。若い皆さんが、そうした課題に関心を持ち、活動に参加し、主体的に取り組まれることが、新しい時代を作ることにつながっていくと思います。そのためにも「経験は買ってでもしろ」といいますが、いろいろな人と交流を持ったり、読書をして昔の人の経験を共有するなどして、目の前で起きていることの背景や未来を想像する力を高めていただきたいです。そうした想像力を湧きたてながら、やりたいことを実現する意思を持って、ひとつひとつの課題解決に取り組んでいただけたらと思っております。
【Profile】加藤勝信/1955年11月22日、東京都生まれ。1979年、東京大学経済学部卒業。大蔵省を経て政界へ転身。2003年、第43回衆議院議員総選挙で自民党から出馬し、初当選。2015年、第3次安倍第1次改造内閣で内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画)、一億総活躍担当、女性活躍担当、再チャレンジ担当、拉致問題担当、国土強靱化担当として初入閣。厚生労働大臣、働き方改革および拉致問題担当大臣を歴任し、2020年9月、第84代内閣官房長官に就任。
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